愛おしき甥について

  2017/08/22

週末は実家に帰っていた。というか、最近は毎週帰っている。なぜなら特にすることもないからだ。いや、正直なところ単にさみしい。ついでに、もうすぐ東京に戻るので、また会うのは年に二〜三回になるだろうから親孝行を、という建前。本音はさみしい三十路独身男性の現実逃避の一環である。

それはともかく、今朝は甥が熱を出したということで、わたしの母が預かることになった。それで、甥が来ていた。

37.6度とそれほど高熱ではないようだが、やや元気のない顔をしていた。ぼくの顔を見ると、開口一番「おい」と言う。まるで単なるチンピラである。しかしそれは三歳児であるからして、まったく愛おしいというほかない。

ぼくが洗面をして出てくると、また甥は言う。「早く砂の中に行きなさい」

まったく意味不明だが、思わず吹き出してしまう。ぼくはわかったわかったと言って砂の中に、ではなくトイレへと入っていった。

それから30分後(わたしにとってトイレは小旅行である)ばかりして戻ってくると「砂の中に行ってきた?」と問う。

行ってきたよと言い、「ダンゴ虫がおったよ」と言った。すると甥は「ミミズは?」「あー、おったおった」「うんこは?」「ちょっとあった」「スイカは?」「それはなかった」「おしっこは?」「それもなかった」

どう考えてもくだらないやり取りだが、心が満たされるのを感じる。子供はほんとうにいいよなと思う。基本クソ野郎な自分ではあるが、こういう父性的な精神はかなり濃厚に持ち合わせているようだ。

母が病院に連れていくというので、ぼくよりも先に甥は家を出ることになった。

別れ際、甥は「ともくんさようなら。ひとりぼっちになってください」

子供はいいよ。まったく最高だよ。もちろん反抗期には身を切られるような思いをせねばならないのだろうが、この年頃のかわいさったら、ちょっと他のものには代えがたいものがある。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

ご支援のお願い

もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。

Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com

Amazonほしい物リストで支援する

PayPalで支援する(手数料の関係で300円~)

     

ブログ一覧

  • ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」

    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

  • 英語日記ブログ「Really Diary」

    2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。

  • 音声ブログ「まだ、死んでない。」

    2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。

  関連記事

努力する才能だけはある。

2012/07/02   エッセイ, 日常

いろいろ紆余曲折あって忙しい。とりあえず、この土日もひきこもって20時間くらいは ...

2008/04/16   エッセイ

雨が降りだしました

海鮮おこげ、のレシピ

本日、ではなく昨日は夜間料理研究会、でした。 夜間料理研究会というのは、部活やサ ...

理由はいらない

2014/11/06   エッセイ, 日常

ドアにものがはさまる。急病人が出る。車両点検をする。踏切内に人が立ち入る。 今週 ...

脳内が停止する日

2013/04/10   エッセイ, 日常

古代、心は心臓にあると思われていた。しかし現代、心が心臓にあると考えている人はま ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2024 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.