ぼくやわたしの麻婆豆腐
2017/08/22
昨日の授業は中華料理で、かの「陳 建一」先生が講師としていらっしゃった、とは言っても、料理の鉄人とかいう番組は見てないし、東京に出てきてからというものテレビとはめっきりご無沙汰であるので、ぼくとしては何かの食品のパッケージに載っていた「陳 建一監修」とかいう感じの人、という曖昧な印象しかない。ので、ウィキペディアにてちょっぴり引用。
1993年〜1999年、フジテレビ系列で放送された、『料理の鉄人』の中華の鉄人として名を馳せた[1]。コスチュームは黄色。登場シーンでは、片手に中華包丁を手にしていた。番組開始当初から最後まで出演し続けた、ただ1人の鉄人でもある。また、史上初めて敗れた鉄人でもある(挑戦者は同じ中華料理の程一彦[2])。
引用おわり
だそうである。引用箇所に問題があるのかもしれないが、とにかくはなんだかみんな有名人だ芸能人だキャッキャッキャッとやっていたので、なるほど有名人なのであろう。そしてぼくも一応キャッキャしましたということで、初コック服姿の画像をアップしてみた。お恥ずかしい。というか、さっき同じ班の人に画像データを送ってもらった。というか、肖像権とか、みんなの了承を得てないが大丈夫だろうか。すいません事後報告。画像、アップさせていただきましたありがとうございます。
それはともかく麻婆豆腐なのだが、確かにおいしかった。先生が作ったのを味見させていただいたのだが、なんというか、味オンチのわたくしがいうのも説得力に欠けるが、"深い味"がした。たぶん。
で、もう一つの料理は鶏肉のピリ辛炒め?(たぶん名前ぜんぜん違う)で、そこにはカシューナッツが入っていて、甘酢で仕上げてあるのであった。これもまた、ベリーグッド、であった。まあ、ぼくとしてはカシューナッツが入っている時点で「これはよい!」と思っていたのだが。
そしてなんだか先生に言うのもアレであるが、やはり料理の手つきと言おうか風格と言おうか、確かに何か学校の先生とは一味もふた味も違うような、気がした。あくまで気がした、だけである。ぼくはさっぱり人を見る目が無いので、ただ、みんなのキャッキャの雰囲気に呑まれてわあすごいナァとなってしまったに過ぎないのかもしれないが、気はする、した。
とりあえず、昨日の授業は学校に行ってよかったなあ、学費払ってよかったなあ、という授業ではあった。また、東京だからこそ、こういう高名な先生がポーンと簡単に来てくれたりもするのだろう、とも思った。それはまあ、地の利というやつではあるのだろう。だからと言って東京に未練はないが。
あと、特に興味深かったことがひとつある。陳 建一先生が料理人になることにした理由を語ってくださったエピソードである。
陳 建一先生の父親は陳 建民という、陳 建一先生よりもさらに偉大なお方らしいのだが、とにかくはなにがしかの料理屋をやっていて、陳 建一先生が子供のころは、その父親の働く調理場が、遊び場だったそうである。で、働く父親の姿を見て、とにかくカッコイイと思ったと、そうおっしゃっていた。
なんか、ヘェ〜、と妙に納得した。カッコイイ、か。
結局、人が何かになろうと思うのは、憧れ、というと月並みだが、いやもっと単純に、「カッチョええ!」(原田宗典風に言うと)というある種の興奮なのかもしれない。すでに何度か描いたが、ぼくもまた同級生が描いたベラボーにうまいデッサンに度肝を抜かれた憧れから絵を志したのであった。
それは子供の頃に誰しも必ず一度や二度は抱く感情で、その対象は玩具であり、テレビの中のヒーローであり、スポーツ選手であり、そして友達であり親兄弟だろう。
そしてその「カッチョええ!」には、特に男が抱く「カッチョええ!」には、十中八九"嫉妬"が混じっている、気がする。
闘争本能というやつだろうか、あんなふうにできていることがすごい、くやしい、うらやましい、ちくしょうめ、おれもああなりたい!という、そういう心の動きがあるような、気がする。
まあ、夢なんてものはなんだっていいのとは思うのだが、ひとつ言えるのは、身近にそんなにも「カッチョええ!」大人が存在していたということは、それはもう幸福以外の何者でもないだろう。
わざわざぼくがあらためて言うことでもないが、「カッチョええ!」大人が居なくなったと言われて久しい。
メガバイトやギガバイトやテラバイトとして情報化できるモノも結構だが、真に人を動かすのはそういうハコに収まる理屈でないことだけは確かだろう。
頑なな人が心ひらき相好を崩すのは、いつだって意外な、取るに足りない、何気ない瞬間なのである。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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