ペペロンチーノとかけて思春期と説く。その心は汗と油でどろどろさ。

  2017/08/22

昨日は外部の先生がいらっしゃってペペロンチーノとパンナコッタのレシピを教えてくださった。

その方は、なんだったっけ、神田じゃなくて、ああそうだ、神楽坂とやらでイタリアンのお店を10年以上もやっているという、ふつうの会社であればきっとばっさばっさと仕事をさばいてゆくキャリアウーマンであろうパワフルな女性シェフであった。

で、なぜだかぼくはその方に「パンナコッタ新宅」という、新宅ボーイにつぐ呼称をいただいた。子供のころは、そういう日常のふとした瞬間にわけもなくぽろっと出てくる揶揄的な呼称にイラッとするというか本気で切れることもままあったのだが、今となっては笑笑のトイレに必ずある例の「親父の小言」の信者であるからして、「人には馬鹿にされていろ」で、問題ないないない、というかそれもまた人間としての修行、なのである、というか、それはぼくの心がけ一つである。

というかまあ、そんな呼称ひとつでぼくの人格が侵されるものではない。いや、でも、中国をシナっていうのはダメっていうし、日本人をジャップというのは蔑称にあたるわけだし、お母さんをお袋っていうのはやはり女性は産む機械に近いような感じがあってなんだかなという呼び方であると思うし、そんなわけで呼称にはおのずからそのものに対するアイデンティティが宿っているともいえるのだが、まあ、どうでもいいや。

で、やっと本題のペペロンチーノですがね、正式にはアーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノですけどね、アーリオはニンニク、オーリオはオイル、エは&、ペペロンチーノは鷹の爪の意味なんですけどね、そんなことはまあ頭の片隅にでも置いといていただきたいんですけどね、とにかく何が言いたいって「油多すぎだろ」という一語に尽きる。

今でこそぼくは、ようやくで「オイルをしっかり使わないと料理はおいしくならない」と痛感いたしまして、カロリーは無視というか別問題として切り離して、しっかりとオイルを使うようになったんだけれども、そのぼくの目からしても「それじゃあ油まみれじゃろうが、ええ?」と言いたくなる油の量であった。いくらオリーブオイルが不飽和脂肪酸だかなんだかで健康によいとか言われていても、それじゃあ早晩ブタ野郎になるじゃろうが、ええ? という量なのであった。油の海と言っても決して過言ではなく、ますおさんの口調で、ええっ? カツオくん大丈夫かい? と言いたくなるような、ほんとうにだばだばな量なのであった。まったく、証拠画像がないのが悔やまれるところである。

そんな油テロリストの師いわく、ペペロンチーノはシンプルな料理だからこそ難しい、でも基本だからちゃんとできるようになると幅が広がる、バリエーションも豊富、がんばれ、とのこと。

確かにぼくとしては正直なところ簡単でしょう、と思っていたにも関わらず、ペペロンチーノというか単なるオイリーなべったべたの塩やきそばみたくなってしまった。のが、本日の画像。

べったべたなので食べるうちに唇はじめ口のまわりがモンゴル相撲よろしくぬらり、ぬらり、きら、きら、つる、つる、てか、てか、まる、まる、もり、もり。ある意味では男女問わず過剰にグロスを塗りたくっているように見えなくもなくて、というかむしろそのようにしか見えなくて、みんながみんな「魅せる唇」「モテリップ」「モテ唇で落とす」などの最近よく見る日本語崩壊寸前のキャッチコピーをつけて各々ポージングを決めていただきたいような光景であった。

というか実際、ぼくは家で何度となくペペロンチーノを作ったことがあるにも関わらず、あんな量の油は想定外であった。油テロリスト恐るべし。緊急テロ対策として、まずは不肖パンナコッタ新宅としてはランニングに精を出したいところである。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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