新宅節

  2017/08/22

このブログの熱心な読者であれば、私に対して、すでに「新宅節」とでも呼べそうな固定観念が出来上がっているのではなかろうか。

ちなみに節の意味は、『 その人独特の語り口。演説や講演にいう。(goo辞書より)』である。演説でも講演でもなく文章だが、まあ、いいか。いや、どうでもいいか。

タイトルにわざわざ新宅節などと冠してはみたものの、これと言って特に意味はない。ただ、下記のコラムがなかなかおもしろかったので、”節”という言葉を使いたかっただけである。

それでは、昨日に引き続き、わたくしの手抜きの定番であるコラムの転載をば。北海道新聞に掲載されているコラムの卓上四季より、「金金節」を以下転載。

からかうようにも、怒りをこらえているようにも聞こえる。そしてそれは、終わりを知らないかのように続く。金(かね)だ金々 金々金だ金だ金々 この世は金だ 金だ金だよ 誰が何と言(い)おと 金だ金だよ 黄金(おうごん)万能…

▼一昨年亡くなった小沢昭一さんがよく歌っていた「金金節(かねかねぶし)」。もと歌は明治から大正の政治、世相を痛烈に風刺し、庶民の喝采を浴びた演歌師添田唖蝉坊(そえだあぜんぼう)の作。その傑作のひとつ「増税節」については、消費税値上げにからめて、当欄で以前に触れた

▼埋もれていた“声”をよみがえらせたのは、いかにも小沢さんらしい。各地を行脚し、消えゆく放浪芸を記録した草の根を愛する人は、唖蝉坊の情念に心の底から共感する人でもあったのだろう

▼まさに、金だ金々、それも億単位の金だ。みんなの党の渡辺喜美さんが、まみれた金の重みに耐えかねたように、結局、自ら立ち上げた党の代表を辞任した

▼使途が問われている金は、手元にあると使ってしまうので5億円弱を妻の口座で管理してもらっていたと弁明する。現金5千万円を「妻名義の貸金庫に入れた」と言い訳した前都知事もいたっけ

▼奥さんにおんぶにだっこで浪費欲を我慢できない人は、公党党首はもとより政治家失格。「責任野党」の重い荷を降ろしたら、大好きな熊手で有名な浅草・鷲(おおとり)神社かいわいの散歩はいかが。近くの浅草寺には唖蝉坊の碑もあるそうだ。

【2014/4/9: http://www.hokkaido-np.co.jp/news/fourseasons/532182.html】

転載終わり。

この金金節なるもの、言葉だけは知っていたが、検索して全文を読んでみると、ちょっと芸術的なアウラすら感じられる。なんて、ぼくだけだろうか。以下、添田唖然坊の「金金節」の一部を引用。

金だ金々 金々金だ
金だ金々 この世は金だ
金だ金だよ 誰が何と言おと
金だ金だよ 黄金万能

金だ力だ 力だ金だ 
金だ金々 その金欲しや
欲しや欲しやの顔色目色
見やれ血眼くまたか目色

一も二も金 三・四も金だ
金だ金々 金々金だ
金だ明けても 暮れても金だ
夜の夜中の 夢にも金だ

泣くも笑うも 金だよ金だ
バカが賢く 見えるも金だ
酒も金なら 女も金だ
神も仏も 坊主も金だ

引用終わり。

呆れるような悲しいような、あるいは達観したような、とにかくは妙な力を持った歌である。あるいは新宅節にするならば、この金の部分を「俺」か「死」か「虚無」にでもすればよい。最近の心境のオススメではダントツで虚無である。

それはともかく、金金金。まあ、そうだよなと思う。商売でお客からお金をもらうにしろ、働いて会社から給料をもらうにしろ、誰しも「四の五の言わずにさっさと金出さんかい」と思ったことがあるのではなかろうか。いや、自分だけか、どうか。

ほんとう、生きていると七面倒くさいことがら夥しい。ああもう、どうでもいいから金よこせ!と思うのだ。

その感覚を直接的に発散すれば、引ったくりか強盗あたりになるしかない。しかし、それでは臭い飯を食うことになるのでぐっとこらえて、表面上ではいつもお世話になっておりますありがとうございますと恭しくかしずいて、ようやくでお金をいただくことになる。本心ではさっさとよこせボケくらいに思っているが、口には出さない。決して、口には出さないのだ。

そうして、お金のことはあまり考えていないというか、執着していない風を装って生きていく。ほんとうは金のことしか考えていないだけに、よけいに浅ましく、憐れっぽい。

いっそ金金節を社歌に国歌にと普及させれば、あるいはすっきりするのではないか。本音も金も、貯め込むとろくなことがないのだから。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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