盗難と言えば学校、学校といえば若者、若者といえば馬鹿者

  2017/08/22

本日の画像、すこし前に学校のロッカーにて、クラスメイトが発見し笑っていたのを横から割り込み撮影したものである。

なにやらロッカーから3DSが盗難されたようである。

それにしてもわたしの学校では盗難が多い。主にコック服に着替える際に使うロッカールームで、である。傘など置いておくと99%無くなると評判である。

4桁のダイヤル式の鍵のついたロッカーなのだが、魔が差すのがデフォルトの輩がいらっしゃるようで、財布をはじめiPodやゲーム機器など、貴重品の盗難が絶えない。つい先日もクラスメイトがPSPを盗まれたと嘆いていた。

これから飲食業、つまりサービス業を志す者が集まる学校にも関わらず悲しく情けない限りである。「泥棒の店員が居る店にオチオチご飯など食べに行けませんよね?」というような教員好みの嫌味はさておき、まあ、生徒の大多数である昼間の生徒は基本的に高校を卒業したばかり〜せいぜい+2歳までなので、致し方ないのかもしれない。

そんなお年頃、善悪の判断は十分についても、いかんせん分別と経験が足りないのである。

善悪は究極のところ、やってみなきゃ分からないという部分があると思う。誰だって盗むのがこの世では悪いことだとされていることくらいわかっているだろう。しかし、わかっていることと、実際の行いとは決定的に違うのだ。残念なことだが、一度痛い目に合うか、それなりに歳を重ねなければ観念と行動がイコールには中々ならないものなのなのだ。

とまあ、うっとうしい感じの一般論を展開してしまったが、冷静に、じゃあどうしたら窃盗が無くなるだろうかと考えると非常に難しいことに気づく。教育とは、つくづく難しいものだと思う。教員の皆様がた、日夜ご苦労様です。

さて、前置きが長くなったが本日のお題は画像の通りである。が、いかんせん画像がぼやけているので、老婆心で下記にテキスト化しておきたい。

ここから〜

私のロッカーから3DSを持って行ってしまった方へ

この際、本体は差し上げますので

中に入っていたソフトの「ポケットモンスターホワイト2」

だけでも返していただけないでしょうか。

箱も説明書も無い状態で売っても大した額には

ならないでしょうが、

私にとっては長年の努力が詰まった大事なものなのです。

どうかお願いします。

〜ここまで

添削というか、気づいた点を箇条書きしたいと思う。国語のテストでよくある「筆者はこの時どんな気持ちだったでしょうか」というやつである。

・「持って行ってしまった方へ」という箇所、「しまった」という表現に、恋人が去って"しまった"時のような悲哀を感じる。ぼくは君を離したくはなかった。だが、君は去ってしまった。嗚呼、去ってしまった3DS、いまいずこ。

・「この際」という箇所。前置きも何もなく、いきなり本題である。仮に警察などがこのような文章を書くとしたら、たとえば「○月○日にこの交差点でひき逃げがありました」というような状況説明から始まるであろう。しかしここでは一切説明がない。有名な「おい小池!」のポスターにも似た、暴力的な怒りが感じられる。つまり、この文章は犯人に対して、むしろ、犯人にのみ向けて書かれた文章であることがわかる。「おい犯人!わかってるよな!おまえだよおまえ!この際……」というわけである。だけど小池にしてもあんなにポスター張ってたのに死んでたからなァ……。

・それにしても盗まれた筆者は怒っている。状況説明をすっ飛ばしてしまうくらい怒っている。しかし突如「〜だけでも返していただけないでしょうか」と一気にトーンダウン、低姿勢である。犯人は憎い、しかし、切実に返してほしい。返してください。お願いします。涙を流して懇願する。誘拐犯と交渉する親御さんにあるようなアンビバレントな感情が見て取れる。うん、返してくれるといいね。でもたいてい誘拐されると殺されちゃうんだよね。

・「箱も説明書も無い状態で売っても大した額にはならないでしょうが、私にとっては長年の努力が詰まった大事なものなのです。」というくだり。あなたにとっては無価値でしょうが、わたしにとっては大事なのです。これは、たとえばやんちゃな子供が目を離したすぎに高価な骨董品などをいじり倒していたりした時に近いだろう。いや、ハリウッド映画で時限爆弾などを解除しようとするときなどによくあるセリフ「よーし、いい子だ。そのままだ。OKOK、よーしいい子だ、とってもセクシーだよ」とかいうやつである。って、全然関係ないか。

それにしても、被害にあった彼が不憫でならない。「モノより思い出」とはどっかの車のCMのキャッチコピーだったが、確かにはじめは単なるモノでも、いろいろなことをするうちにモノがモノ以上のものになったりするから人間はややこしい。

しかし、そんなに大事なものなら学校に持ってくんなという論理も成り立つが、そんなに大事だから肌身離さず学校に持ってきたのだとも言える。

「浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」とはよく言ったものである。おっしゃる通り、地球滅亡の日まで尽きることはないだろう。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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