わたしはわたしのお友達

  2015/07/03

だんだんと切実になってきた。友達が欲しい。損得関係なく、仲良くしたい大事にしたいと心から思える友達がほしい。電車で30分以内くらいの範囲に。

もうちょっとなんか、誰かいるような気が漠然としていたけれど、ほんとにだれも居なかった。

それで、今までのことを思い返してみた。いったいどうやって友達を作ってきたんだろうかと。

小学校のときは近所に親友が住んでいた。ひとつ年上で、夏休みなんかは毎日のように遊んでいた。しかし、なぜに仲がよかったのか、いま考えてみると、決定的な理由は特にない。

まあ、子供なんてそんなもんなのだろう。あるいは、熱烈にカブトムシを大事にするような愛玩感情と大差ないような気もする。トカゲやセミでも構わないような、容易に代替可能な存在。

中学校のときは、学校で話す程度の友達はいたが、休みの日まで遊ぶような友達は居なかった、気がする。というか、軽くいじめられていた気がする。いや、単に自意識(まだ自尊心ではない)および被害者意識が強かったので、そう思い込んでいただけかもしれない。

しかし実際、あまり学校には行きたくなかった。修学旅行に行く何日か前に、いじめられるから行きたくないと親に泣きすがって困らせたのを覚えている。忘れたいけど、しっかり覚えている。何がどうなったんだか、結局修学旅行には行ったんだけれども、特に思い出は無い。

高校もまた似たようなもので、中学高校はぼくにとってクソな日々だったと今でも思う。いや、高校で美術に出会ったのはよかったのか。いやいや、完全に人生を棒に振ることになったから全然よくはないかもしれない。

美術に出会っていなかったら、何をしていたのだろう。そもそも保守的な性格なので、どうでもいい仕事をどうでもいい感じでぎりぎり正社員で雇われているという感じだろうか。夢も希望もない惰性で、日々はぬるま湯。そして覇気も何もなく、まったくモテない。そもそも、自分の性格も今とは全然違っていただろう。美術は圧倒的にぼくを変えた、と思う。

そういうわけで大学デビューである。今までの暗い過去をかなぐり捨て、友達百人作ろうと、本気で思っていて、そのように振る舞った。それから1〜2ヶ月、わかりやすく友達はたくさんできた。携帯、ではなくPHSの電話帳は新鮮な名前で溢れかえった。

しかしそれからまた1〜2ヶ月。ほとんどの人は速やかに消えていった。そして今では、そのすべての中で3〜4人が残っているだけである。

いや、それはともかく、だからどうやって友達を作っていたのか。って、ああ、あれが無いんだと思う。尊敬という気持ちが。

よく言われることだけど、彼女でも友達でも、適当じゃなくもっとも大事な人に対する感情には例外なく尊敬が伴っている、と思う。

いやいやいやいや、そもそもそもそも、仲良くしようという気持ちがないのだ。それはもう、全然ない。

なるほど、合点。我ながら納得である。そりゃあ友達ができるわけないわ。おわり。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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