理由なき飲酒

  2017/08/22

昨夜はビーフシチューと赤ワイン一本を飲んだ。

赤ワインのお値段は398円と、最低価格である。基本的に酔えればなんでもよい。酒のクオリティに興味はない。

単なるアルコールでしかないし、それが脳に薬理作用を及ぼすだけのことでしかない、と思う。

それでまあ、わかりやすく酔っぱらった。

酔うと、時間が恐ろしく早く過ぎ去る。夕方に飲み始めたと思ったら、いつの間にか深夜になっていたりする。

人生とは、つまるところ大きな”暇”なんじゃないかと、大学生のころに思った。だから、暇という巨大な穴に、仕事だとか恋愛だとか趣味だとか夢だとかをありったけ放り込んで、暇をつぶすのである。

そう考えると、酒は暇つぶしの王様である。

王様からの連想で、今日、appleの代理店での待ち時間に雑誌で読んだ言葉を思い出した。フランスの作家、アベル・エルマンの言葉である。

「男というものは嘘の国の庶民であるが、女はその国の貴族である。」

すでに、いつかどこかで読んで知ってはいたが、いまの自分には、骨の髄に染み入るような説得力をもって迫ってくる。

人は多かれ少なかれ嘘をつくし、嘘をつくのが自然なのだし、もっと言えば嘘をつかなければ生きていけないのがこの世なのだろうけれど、しかし、嘘にも貴賤というものがあるように思う。

貴い嘘と、賤しい嘘と。

それはともかく、カメラの壊れていたぼくのiPhoneは本体交換となり、新品のiPhoneになって戻ってきた。また折に触れて写真を撮って、Twitterでつぶやいたりしたい。

と、また連想で思い出した。「写真には 写らない 美しさがあるから」といえば、ブルーハーツのリンダリンダであるが、まあ、たとえ外道に堕ちたとしても、ドブネズミに見出すような、神仏にすがることにも似た、無理矢理の思い込みによる美しさくらいは死守したい、とは思う。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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