盲目なる我が身

  2020/08/25

先日の、賃金不払い問題の記事を読んでくださった方、その内の一部の方々へ。このようなくだらない問題に、同情や励ましのご連絡をいただきありがとうございます。

同情するなら金をくれ!というのが人間の本質だとばかり思っていたが、いざ自分の人生にとって空前絶後の苦難に際してそのような言葉をかけてもらってみると、どうして、本当に救われたような気持ちにさせられて、自分でも、ちょっと驚いてしまった。

共感の力とでも言えばいいのか。ぼくは筋金入りのエゴイストなので、基本的には人に対して共感する気持ちを持ち合わせていない。それこそエゴイストなので、おれはおまえに共感しないがおまえはおれに共感しろ、とは思う。

それはともかく、おかげさまで、ようやく平生の快活さを取り戻せてきたような気がします。とはいえ、問題はまったく解決していないのだけれど。

閑話休題。

誰でも、人のことはよく見えるものである。ここでのよく見えるとは、客観的に分析・判断できるという意味である。反対に、自分のことは往々にしてよく見えないものである。

たとえば、小さな水たまりを思い浮かべてみてほしい。顔を思いきりそこに近づけて見れば、大きな湖にさえも見えてしまうものだ。自己の存在の本質は、意識的に気をつけていなければ、往々にして実際と乖離する。

とかいう説教臭いことが書きたかったので、適当に説いてみた。南無阿弥陀仏。というのは建前で、ほんとはただ単に下記の社説に繋げるための前ふりでしかない。

【師走の遁走】

<開戦直前に『日本は敗れる』 東条首相、知りながら開戦>。1983年8月11日、毎日新聞夕刊1面トップを、大見出しの記事が飾った

▼太平洋戦争の突入3カ月前に、青年官僚で組織した“模擬内閣”が「対米戦争は必敗」の予測をしていた史実を、戦後生まれのルポライターが発掘した、という内容。若手の本が発売前に全国紙の1面に載るのは珍しい

▼作者は猪瀬直樹さん。面識があった同紙社会部記者が、「昭和16年夏の敗戦」(世界文化社刊、後に文春文庫)の試し刷りを読んでスクープした、と文庫本の解説で明かしている

▼いやはや、人生とは分からないものだ。埋もれた歴史を明らかにした「気鋭の作家」が、30年後には、疑惑の闇を晴らさぬまま職を辞す「都知事」として、各紙の1面を“飾る”とは。本人さえも予測できなかったろう

▼それにしても、お粗末な記者会見だった。「都政を停滞させず、局面打開のため」に辞めるのだそうだ。「自分は政治のアマチュア」と繰り返していたが、東京五輪を引き合いに出した言い訳は“立派な政治屋”の弁で、真実を求める作家の言葉ではない

▼新著は五輪誘致の舞台裏を描いた「勝ち抜く力」だそう。作家としての実績までは否定しないが、食指が動かぬ。徳洲会マネーの舞台裏と自らの転落を赤裸々にえぐる「平成25年師走の遁走(とんそう)」なら読んでみたいが。

(北海道新聞 「卓上四季」 http://www.hokkaido-np.co.jp/news/fourseasons/511229.html)2013・12・20

猪瀬直樹都知事の、国会での5,000万円がこのカバンに入る入らないの質疑応答をご存じの方ならば、ただただ大きくうなづくしかない。これぞ社説ともいうべき、痛快な物言いである。

それにしても思うのは、あんな小学生の学級会みたいなやり取りを、国の代表者が集う国会でやるんじゃない馬鹿者、と思う。

もちろん、ぼくは政治に疎いし関心も甚だ低いが、ほんとう、馬鹿なんじゃないのかね。こんな政治では、論じるのはもちろん、関心さえも持つ価値がないと思う。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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