凡庸な日々に捧ぐ

  2017/08/22

ぼくの人生というものが、うまくいっているような気もするし、そうでもないような気もする。

今年に入ってから、良いことがまったくない。そのことを、昨夜、樋口に延々と話した。

昨日は、昼下がりから、ワンダーシード2014の搬入で南砂町に行き、その帰りに六本木ヒルズの森美術館に行って、六本木クロッシング展を見た。知り合いにこの展覧会の招待券をもらっていたのだが、なんだかんだと行かずじまいになっていたのである。それが、会期終了ぎりぎりで、ようやくすべり込んだのであった。

いいね!というほどの展覧会ではなかったが、風間サチ子の作品だけは相も変わらず圧倒的によかった。素直に尊敬する。それから、初見だがShugoArts所属の千葉正也という人の作品もよかった。かなりデビッド・サーレに近い、というか、かぶっていると言っても過言ではないが、日本人的な感性、土着的な雰囲気が、デビッド・サーレの、カラッとしたいかにも欧米的な画面とは異なる印象を与えている、ような気がした。よくはわからないが、彼の作品はなかなか良いと思う、という上から目線。

そうして展示を見て回っていると、思いがけず、この展覧会の招待券のチケットをくれた張本人と遭遇した。彼女はぼくの顔を見て、まさか、信じられないという、ひどくわかりやすい映画的な表情、そしてリアクションをして、「運命だ」とつぶやいた。ぼくは、冷笑しつつ、馬っ鹿じゃねーのと返したが、あるいは、そうなのかもしれなかった。

地方の、人もまばらな貸ギャラリーならいざ知らず、人波でごった返す大都会の六本木で、同じ美術館に居たからといって、そうそう遭遇できるものでもないだろう。人は、人の中に消えて、埋もれる。そんなことは、当たり前すぎるほどに当たり前で、だから、運命、いや、そもそも運命なんていうものは人間の勝手な思い込みの言い換えでしかなくて、そんなものはあるはずもないのだが、確率論としては、相当に低いことだけは確かだろう、とは思う、思った。

まあ、そんなことはどうでもいいのだけれど。

閑話休題。

いま、いま、何かにつけて思うのは、「艱難、汝を珠にす」という言葉である。

2014年に入って2週間ほどが経ったが、笑えるくらい、ロクなことがない。こうも面白くないことが続くものかと、それこそ、もう笑うしかない。

だから、この一週間ほどは、とにかく酒を飲んで適当にやり過ごして笑っている。

以前よりも、酒、アルコールというものが、自分に及ぼす作用がわかりやすくなってきた気がする。

わかりやすく気が大きくなって、わかりやすく楽しい気持ちになって、わかりやすくいろんなことをごまかせられる、忘れられる。

上記のようなことがらは、アルコールの作用の典型ともいえるものである。それが、強く現れるようになったことを、痛感せざるを得ない。

歳をとって、酒に弱くなっただけかもしれない。いや、単に、酒を飲み慣れて、酒の効用のみを器用に取り出すことができる身体になったのかもしれない。

このブログを書いている今も、2014年1月13日月曜日22時03分の今も、実家から送られてきた赤ワインを飲みながら書いている。半分くらいでやめるつもりだったが、結局ボトルが一本、空になっている。

飲みすぎである。肝臓はもちろん、身体が腐敗しているのを、ぼんやりと感じる。しかし、いまの私にとって、酒を飲むほかに、これといって何もないのである。まったく、何もないのである。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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