ぼくのサイズ

  2015/07/03

ぼくのサイズと言っても、いちもつのサイズとか、そういう下世話な話ではない。というか、まず最初にそんな断りを入れる時点で下世話である。

いつからだったか、服はジャストサイズが素晴らしい、ということになった。ラッパーには悪いが、ダボダボの服はかっこ悪い。ついでに頭も悪い。というのは偏見。だけどそういうふうに見られるためにやっているのだろうから、ぼくの偏見は正論。

しかし、そんなものは個人の嗜好でしかないので勝手にしたらいい。

こんな話を書こうと思ったのは、朝、パンツをはいたから。とか書くと、いつもはパンツをはいていないみたいだけど、別にノーパン健康法の信者などではない。

とりあえず、今日は二日酔いの鈍重な頭なので、まどろっこしい言い回しはご容赦願いたい。

さて、今日のぼくのパンツはBODYWILDのLサイズである。今もやっているかどうかは知らないが、木村カエラがCMしていたパンツである。

ぼくのことを見知っていて、Lサイズに違和感を持たなかった方は、ぼくのことを全然見知ってないしわかっていないと反省しなさい。

ぼく自身が選んだなら、Lサイズを買うわけがない。そして、ぼくのことを愛している人が買うなら、それもまたLサイズなわけがない。絶対に!

というわけで今日のパンツは、ぼくのことを愛していない人がくれたパンツなのである。

それは3年くらい前に会社の送別会でもらったもので、くれた人は気さくで好感が持てる人だったが、しかしぼくのことをわかってはいなかった。というか愛していなかった。

お店の人もたいていはわかっていない。わかってくれない。1年くらい前に、寝るときは浪人生のようなジャージではなく、大人らしくパジャマを着よう、着るんだぞと、勇んで買いに行ったときなどその典型だ。

店員にこのパジャマのMサイズはありますかと聞くと、ご自身でお使いですかと聞き返してくる。さようさようと答えると、店員、ぼくを頭から足までじろり見て、お客様でしたらLサイズのほうがというありがたくない進言。

おいババア。こっちはMサイズだって言ってるだろ。こっちはな、いちおう新宅さんは細いですねスリムですねで通ってるんだよ。確かに腹は出てきたが、まだまだ細いで通ってるんだよ。それをなんだババア、Lサイズなんか着た日には、だぶだぶで不恰好でしょうがないんだよ。成長期はとっくの昔に終わってんだよ。何歳だと思ってんだおいババア。

という暴言は心の中にとどめ、いえいえ、Mサイズがいいんですと言って、もって来てもらう。そして試着して、ぴったり、おしゃれ、お買い上げ。

それからというもの、夜分に我が家で飲むときなどは、もっぱらパジャマである。樋口などは最初、なんでパジャマやねんと笑ったが、愛する人からはかわいいと言われたので大満足である。

ちなみに、二年くらい前の誕生日に樋口がパンツを二枚くれたが、もちろんMサイズであった。そして去年の誕生日に、パジャマをかわいいと言ってくれた愛する人から二着目のパジャマをもらったが、これもMサイズであった。

やはり、ぼくのことをわかっている人、愛してくれている人はMサイズなのである。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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