とめどない空白に気づく
2015/07/03
別に安息日というわけではないが、とても静かな日曜日を過ごす。
酒や何かで、自分自身と時間をごまかさずに過ごすのは、つまり自分と向き合うのは、とても久しぶりだと思う。というか気づく。
朝から昼になり、昼から夕方に、そして夜になる。それは当たり前のことで、いつも通りのことで、今まで何千回と繰り返してきた中の一日に過ぎない。
そうして時間が流れる中で、自分が何かしらを為す。まあ、絵を書いている。絵を書きながら、小説のことを考える。ぼんやりと構想している話の筋の中で、キーとなりそうなフレーズがときおり脳裏にひらめいて、あわててクロッキー帳に書き留める。じきにそれでは間に合わなくなって、絵筆を投げ出し、パソコンを立ち上げて、小説を書く。吐き出したい言葉があって、どうにもならない苦悩があって、しかしそれをどうにか何らかの作品として昇華させて、ぼくはカタルシスを得る。得たい。
言葉は洪水となって溢れ出る。一語もこぼさず、余さずすくい取ろうと、キーボードを叩き割る勢いでタイプする。Enterボタンをぶっ壊さんばかりにバンバンひっぱたく。はたから見たらきっと怖いし、うるさいから迷惑。だけど一人なので、誰にもなんの関係もない。
間断なくキーボードをひっぱたいていると、仮想の読者ではなく自分が感情移入してきて、胸が詰まる。しかし、10年前のぼくではないので、一応は冷静に読める。てめえのセンチメンタルは読者の失笑だ、って学んだ。
昔から音読の力を信じているので、一区切りつくごとに、声に出して読む。語り部のように、抑揚を付けて読む。 いよいよ狂っているが、それは自分にとって悦楽である。ああ、有意義なことをやってるな、創造してるなおれは、クリエイティブな、素晴らしい時間の使い方だと思う。ぼくの自尊心が収納されている脳みそのどこかしらが、とても喜んでいるのをひしひしと感じる。ちょっとしたトリップ。
言葉を吐き出して、ありったけ言葉を吐き出して、文学賞も読者も想定するが、とにかくは自分の納得のいく文章を、そう、自分自身を救うために書いている。今は絵ではなく言葉なんだと思う。思うが、もう絵はやめない。二足のわらじで構わないだろうと思う。それくらいのモチベーションと時間は十分にあるだろう。なので、絵の制作時間と同じように、小説に取り組んだ時間も記録し始める。
人にはきっと向き不向きがある。たぶんぼくは、絵か文か、その他なにかはわからないが、自分のオリジナルらしい何かを表現することに向いているのだろう。というか、好き。
表現。表現はときに押しつけがましく、表現はときにはた迷惑で、表現は往々にして面倒くさい。
表現する喜びのひとつには、他の誰でもなく自分が鑑賞者や読者の第一号になれるということ。世界でまだ誰も見たことのない世界を作り上げて(作り上げたと思い込んで)、感動と喜びに打ち震える。
他の一切のことが、瑣末なことに思われる。お金を稼ぐことより、結婚をすることより、誰かに優しくすることより、よほど、もっとも崇高な行為だと思える。それで、なんて素晴らしいんだろうおれは、となる。
素晴らしいのだが、元気かどうか、快活かどうかはまた別の話で、いまは幽体離脱しているかのような心持ちで、天気の良さが鬱陶しいし、ぼくの携帯のメモリに入っている人たちが疎ましい。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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