はじめての水彩、はじめてのグリザイユ

  2015/07/03

昨日は西洋の調理実習で学校に行く気まんまんであったのに、不覚にもわたくしのミスで残業になってしまい頭にきたので、もういいやと諦めて家に帰って絵を描いた。

水彩絵の具を買ってはみたものの、展示に旅行にと珍しく多忙だったためかれこれ二週間放置されていたが、ようやくでちゃんと取り組めた。のが本日の画像。本屋で立ち読みしてなるほどと思ったグリザイユ技法でのスタートである。予想以上にうまくいき、また透明水彩とはこんなにも美しかったのかとひとり大満足である。少なくとも現時点では。

ちなみにグリザイユとは、最初に黒やグレイ——ぼくはバーントアンバーだが——そういう色で対象をモノクロで濃淡を描き、後で彩色するという技法である。透明水彩(薄く溶いた油彩でも可)は重ね塗りしても下の色が透けて見えるので、後から黒で陰影をつけるよりも美しく、また楽に描くことができるのである。

グリザイユは油彩の時に一回やってみかけたが、油彩では乾くのが遅くてめんどくさくて結局一度もまともにしたことがなかったのである。それはともかく水彩に活路を見出せたので、学校に行かなかったけれども悔いはない。むしろぼくの人生にとって正解であった。

そう、昨日のグループ展の件ですが、今回は出すのはやめることにしました。先日のYOUNG ARTISTS JAPANで知り合ったニューヨーク帰りの作家さんがfacebookを通してものすごく誠意あるアドバイスをくれて、確かにそんな金を払うんだったらもっと有効な使い方があるよなあ云々と思った次第。「新宅さんの絵はとてもかっこいいと思いますので、是非大切にしてほしいです」なんてことも言ってくれて、こんないい人もいるのかあと思うと同時に、やっぱ同業者に褒められるのが一番うれしいなあと思う。

具体的には、同じくらいのお金を払うのであれば、来年の5月にあるSICF 14に出すほうがよほどいいのではないか(と言っても前回のSICF 13では書類審査で落ちてしまったが)。リアルなお金の話としては、広島からの旅費を往復で35,000、出品料40,000、ホテルに二日泊まったとして20,000としてざっくり100,000円。貸ギャラリーのよくわからない展示会(参加費65,000円)でたかだか数百人に見てもらうのにくらべたら、よほど有効な使い方ではないだろうか。

お金の話ばかりをしてしまったが、村上隆を引き合いに出すまでもなく、アーティストだって稼がねばならず、稼げなければお話にならない。そもそも制作活動につぎ込めるお金なんてたかが知れているので、それをどう有効に使うかを考えることはきっと重要ではあるのだろう。しかしぼくは、そういう方面で頭を使うのはまったくもって苦手なことに加え、幼少期より金銭感覚は雑で、お金はあるだけ力いっぱい全力で使い切ってしまう浪費癖があるので、ひたすら汗かきがむしゃらに散財して"やったような気になって"しまうタイプ、まあ、わざとらしく言えば芸術家タイプなのである。

なにはともあれ、今回はアドバイスをくれた方には深く感謝である。お互いにがんばりましょう。安定した生活とか世間体を抜きにして考えれば(そんなものはなから抜きにして考えている節もあるが)、結局いつでも自分の本心の本心の本心はどうにもこうにも芸術家にしかなりたくない。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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