わたしを拘束する機械

最終更新: 2015/07/03

南武線谷保駅を使うのをやめた。中央線国立駅を使うようになった。

谷保駅までは、徒歩3分。一方の国立駅は徒歩25分。しかし、中央線ならば新宿まで一本だし、終電も南武線に比べて1時間以上遅いし、運行本数も多いしと、何かと都合がいいのである。

しかし、徒歩ではさすがに遠い気がしてきた。ダイエットには最適だが。というわけで、3、4日ほど前から樋口がくれたものの長らく放置していた自転車(マウンテンバイク)を使うようになった。自転車なら、国立駅まで10分もかからないのである。

今朝も、颯爽とマウンテンバイクにまたがった。家を出て数分後、ふと、ズボンの左ポケットに違和感を覚えた。何かが入っているのではない。逆に、空っぽなのである。

いつも入っているはずのものが、無い。携帯電話である。

ああ、忘れたなあと、自宅の机上にぽつねんと置き忘れられたiPhoneがありありと見えた。

しかし、取りに戻る時間はない。寝坊とか、そういうわけではない。今朝も(昨日も)5時前に起きたが、お絵描き+ランニングで、目いっぱい自分時間を有効に使ったうえでの出勤なのである。それで、ぎりぎりなのである。寝坊して急いで出かけたから時間がないというような意識の低い輩とはわけが違うのである。そこのところを踏まえたうえで、この先を読み進めていただきたい。

さて、携帯電話の無いぼくは、誰とも連絡が取れない。しかし、いまいま、これといって連絡を取る用事もない。それなのに、誰とも連絡が取れないというのは、繋がれないというのは、漠然と不安であった。いわゆる現代病、依存症、病気だなと、いや、ビョーキだなと、思う。カタカナで言い直した訳は、特に無い。

では逆に、先方からの用事はないかと考える。思い当たる節は、金融公庫の引き落としが残高不足によりできていないので(専門学校の費用の返済で、毎月3.2万円×5年である。田舎で車を買ってローンを組んだんだと思えば、なんて有意義な買い物だったのかと思ってはいるが、月に3万円って結構大きいのだなあと最近しみじみと思う貧民32歳独身男性である)、その督促の電話が今日あたりにかかってくる、だろう、というなんとも残念極まりない用事である。

そんなんだったら、携帯電話なんてないほうがいいよなあ、とも思う。思うが、結局は夜、家に帰ったら、着信履歴を見なければならないのであって、つまるところそれは嫌なことの先延ばしでしかない。じゃあ着信履歴も無視してしまえばいいのだろうけれど、ぼくと連絡が取れない場合、実家に連絡がいき、今度は母親から督促の電話がかかってくるという、袋小路が待っている。じゃあもっと、母親からの電話も無視すればいいのだろうけれど、しかし、母親を泣かせるのはちょっと、胸が痛、まない。別に。

胸糞が悪いので、金の話はもういい。閑話休題、と。

新しい仕事の業務上、偏差値を調べてみたりしている。しかし、ぼくはそもそも偏差値がなんなのかすら知らなかったので、そこからのスタートである。

偏差値はつまるところ”ふつう”だということであるらしい。50がふつうで、それ以下はバカでそれ以上はおりこうさん。ぼくは、そのように理解した。

興味本位で、自身の母校を検索してみた。まずは大学。【九州産業大学[芸術]42】。バカである。次に高校を調べた。【山陽高校[進学・私]40】。バカである。わが身を顧みた。バカそのものである。

何をもってぼくは自分に自信をもって、自信満々でいるのか、いよいよわからないと思う。人間は偏差値では測れないという一般論でお茶を濁したいところだが、しかし、現在の職場には東大出身ほか偏差値70、80超のおりこうさんがごろごろいるのだ。もう、比較する価値もないほどの差である。虫ケラである。偏差値40そこらのぼくの自尊心はズタボロ、もはやアイデンティティは崩壊寸前である。どうもどうも、バカですいませんねえ、ヘヘッと、おだててはへりくだり惨めな薄笑いを浮かべるしかない。

と言いたいところだが、ぼくの自己同一性は、まったく揺るぎない。たぶん、自尊心にも偏差値というものがあるのではないかと思う。

適当に自尊心偏差値を測ると、イチローで70、石原慎太郎で80くらいではなかろうか。ところがぼくは、120とか、いわゆる計測不能レベルなんだと思う。そう考えると、妙に納得できて、すっきりした。結局バカである。

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新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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