あの冬とこの冬、について

  2020/08/19

先ほど、ブログに「あの冬とこの冬」をアップすると、facebookでコメントがついた。

読書会で毎月お会いしている某Sさんからである。『老いはないでしょう。さすがにまだ早過ぎる。』とのこと。

まあ、そうなのかもしれない。33歳は、まだ若いと言っていいのだろう。

しかし、振り返る10年間の手応えの確かさが、10年前とは明らかに違う。

10年前の23歳の時に振り返る10年前は13歳である。13歳から23歳までの10年間は幼さもあり実に茫漠としている。それに、未来が今よりも圧倒的に不透明だった。

そもそも、10年という時間の中で人間というものが何をなし得るものなのか、自分の可能性も含めてあまりにも予測不可能だった。

だから、10年先や20年先など、わかるはずもなかった。茫漠としているから、あるいは、今が永遠に続くような気さえしていた。

しかし今、23歳から33歳の10年間を振り返ると、人間の、あるいは私の10年は、この程度のものであるということが現実的な量感として認知できる。

だから、これからの10年後や20年後が、だいたいわかってしまう。もちろん可能性は無限だとは思う。しかし、少なくとも、この先ぼくがプロのサッカー選手になることはないし、総理大臣になることもないと断言できる。

自分自身の”たかが知れた”とでも言えばいいのかもしれない。

この10年という塊を、あと4つか5つも積み上げれば、難なく鬼籍に入る。この10年の老い方を考えれば、自分がどのように老けてゆくかということを想像するのは、それほど難しいことではないと思う。

そういうようなわけで、私にとって老いはあくまでもすでに十分リアルなものであって、日々、しみじみと消滅へ向かう足音を聞いて怯えたり諦めたりしているのである。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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