現代のひとであるということ

  2017/08/22

朝っぱらからワイセツな画像ですいません。でもしかし、これはいわゆるいやらしいお店ではなく、普通の飲み屋、焼き鳥屋のようなのです。
しかしこの看板@新宿思いで横丁。
どういう客に来てほしいのか、またこの看板を見て入店を決めた客はいったいどういう輩か、商売はちゃんと成り立っているのか、どうか。
しかしなんの問題もなく成立しているのだとすれば、実はこんなところに世界の端々で起こり続ける紛争とか、折り合いのつかないたくさんの問題の解決のかけらが潜んでいるかもしれない。
いや、まじめな話。
ぼくが客だったとする。この看板を見て入店したとする。まあ、まずはいらっしゃいませと言われ、お飲み物はとなろう。そしてぼくは瓶ビールを頼もう。
そこまではいい。まったく問題ない。
瓶ビールが来たときに注文を聞かれるだろう。まあ一応、焼き鳥の2、3本も頼もう。
それもいい。まったくOKだ。
しかし、瓶ビールが空いたころに他にお飲み物はとやってくる。他にお料理はと、やってくる。
まあしかし、ことを荒立ててはいかん、髪と気は長いほうがよい、慌てる乞食はもらいが少ないなどなど、ことわざを駆使して自分と折り合いをつけながら注文を重ねよう。
しかしぼくも人の子、そのうち酔っぱらってもくる。しかし"料理"はいつまでたってもやってこない。
ぼくはもう頭にきてギャルソンを呼びつけてこういう。「いつになったら"料理"がくるんだ!」ギャルソンは伝票を見て「すべて揃っているようですが」と悪びれずにいう。
ぼくはそこでようやく気づく。
だまされた、と。
そんなことはどうでもよい。ほんとうに。
古代ギリシャかローマの王様は、寄港する船を片っ端から調べあげ、その積み荷の蔵書を取り上げたという。そうして世界中の知が納められた図書館を作ることを夢見たそうである。
その世界の知が、いま、みんなのポケットにわけもなく入っている。むろん、携帯電話である。
それはいったいどういうことなんだろうかと思う。
また、このブログにしても、一瞬にして世界中に発信できるのである。
それはいったいどういうこのなのだろうかと、ほんとうに思う。
良いとか悪いとかではなくて、なにかものすごい時空というか、人類の発展というか、なにかぼくらがいわゆる歴史から切り離されているような、いま現在という、過去の一切とは独立した何かひずみの世界のような、妙な心持ちがする。
現代の人は大変だとか生きにくい、とかよく言われる。小は就職とか年金とか、大は核とか環境とかグローバリズムとか。
しかし今まで、人類史が始まって以来、大変ではなかったことなどなかった、いつでもその時代の、その時々の最先端で、人びとは不透明な未来に不安を抱き、また期待もして、そうして必死で生きてきた。
のである、というようなことを読売新聞だったかのコラムで読んだ。
確かにそうだろう。そうなんだろう。
しかしなにか現代というやつは、どこか切り離された時代のような気がする。
現代はひとりぼっちだと、思う。
それはもしかすると、今も昔も常にそうだった、のかもしれないが。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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