春が膿んで夏になる

  2017/08/22

家を出るとあんまりの青空なので怖気づく。

天気いいなあと思う。春だなあとも思う。そのふたつを、頭の中で無駄に何度も繰り返す。

それから、夏がくるなあと思う。あのいまいましい夏が、また、性懲りもなくやってくる。

どうして、春のポカポカが、いつの間にか夏のギラギラになる。そう考えるだけで気が滅入る。

ふと、春が膿んで、夏になるのだというイメージが思い浮かぶ。ちょうど、傷口が膿んでしまうように、じゅくじゅくになって、黄緑とか変な色になって、いろいろな汁が出たりする。”女の腐ったよう”という表現があるが、さながら夏とは春の腐ったよう。

冬が一番いい。春も決して悪くはないが、ポカポカし始めると止まらないからいけない。いったん温暖という方向へ進み始めたが最後、とことんまで突き進んでしまうのだ。

この世は万事がそのようにできているらしい。この前、パチンコの話をしているのを、小耳に挟んだ。曰く「あそこでやめとけばよかった」。片割れが答える。「ばかだねえ」。

 
馬鹿ばっかりだよ。

どうでもいいが、夏がくる。絶対にくる。しかもそのとき、すべての元凶である春はもういない。夏に全責任を押し付けてドロンである。冬が一番いい。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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