男とは、かくも悲しくおかしく浅ましく
2017/08/22
話には聞いていたが、国立駅前または一橋大学の前の通りの桜並木は、確かにすごい。とは言ってみたものの、すごいってなに?
全長1kmくらいは延々と続く桜並木。そこに桜がきっちり等間隔に植えてある。それがしっかり咲いている。画像を載せればいいのだろうが、昨日も今日も、朝も夜も、右も左もそこらのバカが揃いも揃ってアホみたいな顔して写真を撮りまくっていたので、ぼくは意地でも写真を撮らない、とか言ってるてめえが一番バカなのだが。それはともかく、どんなもんかと思う人は「国立 桜」とかで検索してみれば? と思う。
満開の桜。素直に「きれい」とか言えばいいのだろうが、別にきれいとも思わないし、花なんてどうでもいいし、なんとも思わない。あえて何か言えば、ピンクっていうわけでもないし、白っていうわけでもない、本当に、ごく淡いピンクなんだよなあとは思う。
桜の木の下の花壇にパンジーが植えてあるところがあって、毒々しいほどの原色でもって咲き誇っている。日本人は、こういうのがあんまり好きじゃないんだよなあ、とも。やっぱり奥ゆかしい桜の色が好きで、一年に一回、それもごく短期間しか咲かないのが、好きなんだよなあ、と思う。
ぼくはまあ、そんなものはどうでもいい。
閑話休題。
職場のことをさらすのはどうかと思うのだが、どうにも頭から離れないので、書くことにする。というか、これが今日の本題。
昨日のこと。同僚の子持ちの主婦(とはいえキャリアウーマン)から、「女子会があった」という話を聞いた。
プライベートではなく、単に職場の女子だけで飲んだということである。ぼくはまあ、へえそうなんですかと相槌を打って、話の続きを待った。
「新宅さんの話が出て」
「はい」
「私が、新宅さんの兄弟構成当てたっていう話をしたら、そりゃあ新宅さんはわかるに決まってるでしょう、って」
「まあ、なよなよしてますからね」
「そうじゃなくて、新宅さんのお洒落さを見れば、女兄弟がいるのはすぐわかるって」
「笑。なんの話ですか」
「ほら、私はそういうのよくわからないんだけど、新宅さんはお洒落だっていうことで、女子の意見が一致してましたよ」
はにかみか歪みかよくわからない笑+若干の赤面+激しい動揺+突き上げる喜び、そして「くぁwせdrftgyふじこlp」。
ああ、そうであったか、私はお洒落であったか(まあ、知ってるけど。というか、そのように思われようと思ってやってんだけど、というか、お洒落に女兄弟かどうかは関係ないと思うけど)。
黒夢やラルクあたりに熱狂し、姉からは人間の限界を超えるほどの白眼視をされていた高校時代。思えば遠くに来たもんだと、しみじみ。
この狂った街、トーキョーシティで、颯爽と働き、同僚にはお洒落だと思われている……。どうも、32歳独身、新宅です。
日ごろ何かにつけて毒づき噛みつきまくっている分際でお恥ずかしい限りだが、ほんとうに、心から、生きててよかったと思った。それから、なにかぼくの人生が完成してしまったような錯覚を起こしかねないほど、嬉しかった。
ああ、やっぱり人間ってのは、悲しくても辛くても、数少ない褒め言葉を護符のように抱き締めて生きていくんだなあ。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。
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