携帯電話の馬鹿馬鹿しさ

  2017/08/22

昨日、今日と、携帯電話を持たずに、家を出た。

用もないのに始終いじってしまうのと、まずもって誰からも連絡が来ないのに、漠然と何か(願わくば良いこと)を待っているような”感じ”が不愉快だからである。

携帯電話を持っていない。なんでもないようなことだが、心持ちは全然違う。まず、見も心も軽くなる。これはきっと、無意識にでも精神的に、携帯電話に縛られていることの証だろう。

携帯電話を持っていないだけで、ほんとうの一人ぼっちを味わうことができる。自分と関係があるのは今、その瞬間、目の届く範囲内の事物だけであって、他の、わざわざ何百キロも離れたところの人たちの動向を知ったり、やり取りをしたりする必要はない。

高校のころ、父が、何かと携帯(いや、PHSかポケベルか)をいじっているぼくや姉によく言っていた。

「おまえら、北朝鮮のスパイか?」

むろん冗談であるが、ぼくも姉も、「はいはいそうそう報告書つくっとんじゃーや」などと適当にあしらっていた。

しかし、今思えば、なるほど、そうかもしれない、いや、すごく近いかもしれないなと思う。

なんか、通信がすごく過剰で、コミュニケーションがうまくできているようで実は不自然な、気がする。それこそスパイのように、見聞きしたことを逐一報告するような、わずらわしさ。よくよく考えてみれば、ご苦労なことである。

携帯電話が無くて困ることなんて、数えるほどである。

・会社への電車遅延などの連絡ができない
・本を読み終わった際の読書メーターへの登録ができない
・知りたい言葉や情報があった時に、すぐに調べることができない及びAmazonなどですぐに書籍購入ができない
・急なお誘いがあった時に、応じることができない(これは呆れるほどまず無いので、単なる期待でしかない)

そんなところである。携帯電話は必要か、どうか。もう、携帯割りてえー、と思う。が、まだ割ってない。

でも、電源は切ってある。世間一般と距離を置きたいので、しばらく電源を入れるつもりはない。

だけど、ぼくを放っておかないでほしい。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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