3,500円相当の夜

最終更新: 2016/04/08

私にとっての不幸があったので呑みに行った。いや、呑まれにといった方が正しいかもしれない。

谷保駅前にある、チェーン店の庄やである。

以下に、生ビール、白ワインボトル、豚モツ煮込み、厚揚げ焼き、アジのたたきを飲み食いして思ったり考えたりしたことを書き連ねたい。

(カウンター席の前のいけすを見ながら)なんで魚は水の中で苦しくないんだろうか。まあ、魚は地上では逆に苦しいわけだが。水が満ちているから生きていられるのか。地上は空気が満ちているわけだが。エラ呼吸か。このへんがエラで、水の中から酸素を取り出しているんだよなあ、エラ、か。エラってなに?

隣のおっさんのタバコの煙が流れてきて不快である。しかし、だったら禁煙になってるような高級な店に行けよって話なんだよなあ、うん、しかしそんな店に行けるはずもなく、というか、そういう店は好きではなくて。こういう、大衆的な、どうでもいい店が好きなんだよなあ。うん。ああ、でも、条例とかで飲食店のすべてが禁煙になったらいいんだよなあ。いつになったらなるのだろうか。いつまで経ってもならねーか。まあ、どうでもいいか。

人類史上あった不幸の総量に、幸福の総量はとうてい及ばないと、ある本に書いてあったが、そうなんだよなあ。人生はつらいことのほうが多い。幸せは少ない。そのようにできている、もの。そんなことはわかっている、しかし、それにしても、このくだらない自分の人生はなんなんだろう。クソだな。クソ。

逃避したい。どこか、遠くへ。このiPhoneに五寸釘を打ち込んで、自分にまとわりついているすべての関係性を断絶させたい。どこか、遠くへ。

幸いにして明日は給料日。いろいろな支払いがあるが、それらをすべてぶっち切って、どこか、遠くへ。26万円ほどが振り込まれるから、少なくとも、20日くらいは行方をくらませられるのではないか。

そんなの、世捨て人だ。しかし、死ぬよりかはよほどマシではないか。そうだろう? 死ぬことに比べたら、なんだって、ほとんど、あらゆることは可能だ。

そうだ、可能だ。外国か、どこか。遠くへ行こう。くぁwせdrftgyふじこlp……そうだ、福島に行こう。原発でさぞ閑散としているだろう。それに、原子力のあるところは世界の中心なのだと思うから。ヒロシマが世界の中心だと考えられなくもないように。

そうして明日、起きたら、クソおもしろくもない会社なんかに行かず、福島に行くんだ。そうしよう、そうするんだ。

が、会社のパソコンに私用のDropboxを入れていて、誰でも閲覧可能な状態になっている。これは、これだけはまずい。あらゆる画像やテキストが入っている。これは見られてはまずい。会社をクビになるのは別にいいが、その後でもこの情報を見られるのは困る。まずい。少なくとも明日は出勤して、Dropboxの情報をすべて削除せねばなるまい。これだけは、削除しておかねば。

ということで、今に至る。

わずか2、3時間ほどだったが、科学し、政治を論じ、歴史に思いをはせ、生死をさまよい、逃避行を決行しと、それはもう、めくるめく、とんでもなく濃密な、おどろくほどリアルな、幻聴、幻視とさえ呼べるような、トリップを味わったのであった。

アルコールは、想像の翼を与えてくれるのだと思う。

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新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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