ニート、過去最多の2.3%

  2016/04/08

めずらしく時事問題など取り上げて俗に浸りたいと思う。

ニート、過去最多の2.3%、だそうである。

政府は18日午前の閣議で2013年版「子ども・若者白書」を決定したというニュースによるのだが、そもそも若者白書とはなんぞや。あすなろ白書とはどう違うのか。そもそも白書とはなんなのか。

【白書】

英国において、内閣が議会に提出する公式報告書をその表紙の色からホワイトペーパー(White Paper)と通称していたことから日本でもそれに倣って政府が作成する報告書の通称を白書と呼ぶようになった。 (wikipediaより転載)

【あすなろ白書】

『あすなろ白書』(あすなろはくしょ)は、柴門ふみによる日本の漫画。またそれを原作とする、1993年(平成5年)に放送されたテレビドラマ。(wikipediaより転載)

無駄に勉強になった。ちなみにぼくの人生でまともに見たドラマは南くんの恋人(夕方の再放送)とビーチボーイズ(ベタに広末涼子に恋していたが、いま見ると髪が短いのでいまいちの一言に尽きる)だけなので、あすなろ白書についての記憶の引き出しが皆無である。そのため、説明を読んでもまったくぴんとこない。

それはともかく、ニートが2.3%。これは15〜34歳の若者が対象らしい。というか30歳を超えても若者と呼べるのか? ということで調べてみた。

【青年】

・若年者雇用の定義では、青年層に相当する15〜34歳ごろを若年者としている。

・心理学の場面では、34歳ごろまで指すとされる。

・医療においては、15〜39歳が若年者とされる。

(wikipediaより転載)

なるほど。とりあえず、あと3年くらいは若者ヅラをして闊歩しても定義的には問題ないらしい。もうちょっとヤンチャ(死語)しようと思う。

閑話休題。

15〜34歳の若者の人口は2011年で1,743万人。そのうちの2.3%=約40万人。

ひとつの家庭に2人以上のニートがいる場合もあろうが、それはまあ残念な特殊事例として、単純計算で40万世帯がニートを抱えているということになる。

べつにその全部が全部、苦渋に満ちた日々を送っているわけでもないだろうし、けっこう楽しくやっていることもあるかもしれないが、それはきっと例外で、大半はきっとなんらかのストレスを抱え込んでいるのだろうと思う。というか決めつける。

家庭内に渦巻く葛藤、軋轢、苛立ち、怒り、焦燥、やるせなさ、心細さ、果ては殺意、希死念慮。

親兄弟、親類、友人恋人その他の人々が影響を受けたり巻き込まれるたりする。しかし一番苦しく辛いのは、やはり本人だろうと、ぼくは思う。

大志などなく、ごくふつうに穏便に暮らして生きていければそれでよいという一般の人々にとって、職業はアイデンティティの柱に違いない。

わたしは学生です。わたしは公務員です。わたしは農家です。わたしはスーパーの店員です。わたしは居酒屋の店長です。わたしは魚屋です。わたしはウェイトレスです。わたしは清掃員です。

少なくとも日本では、自己の存在=職業なのである。

社会もそのように見ている。だから無職=得体の知れない人間とされ、往々にして要注意人物、もしくは危険人物のレッテルを貼られてしまう。

そういう世界で発する「わたしはニートです」という宣言は重い。カタカナの横文字が多少の緩衝材にはなっているものの、わたしは無職で一切何もしていませんと公言することは、まともな神経の持ち主ならば決して楽しいことではない。本人が職を求めているにも関わらずニートに甘んじているとすればなおさらである。それはほとんど、わたしは無能ですと公言することに等しい。

どんなに劣等感に満ち満ちた卑屈な人間でも、最低限の自尊心はあると思う。仮に自尊心がゼロだとしても、体力や知力と同じように自尊心というパラメータ自体は誰の心の中にも厳然と存在するのである。

とかなんとか適当に書き連ねてみたが、わたしは彼ら(彼女ら)の行く末に危機感があるわけでも、処し方に提言があるわけでもない。そりゃ世の中にはそういう人も居るよなと、興味本位で思いをはせてみるに過ぎない。

月並みなことを言えば、40万人のニートを抱えてなお沈没しない日本という国は、とんでもない富を蓄えている国なのだなと、ちょっと感慨深いものがある。

ニート1人を養う金額を考えてみてほしい。同居で家賃はかからないと考えても、食費光熱費その他で、一人あたりの生活費は月額1万円は軽くかかるだろう(実際は個人の携帯だって持ってるだろうし、娯楽にだって興じているだろうからあくまでも最低限の生活費である)。

それが40万人である。1万円×40万人=40億円である。毎月、日本中で40億円ものお金がニートのために消費されているのだ。

だからと言ってそんな金額の是非を論じてもしょうがない気もするし、何ら生産しない無用なニートは全員ガス室へというような発想もナンセンスだと思う。

ぼくの考えとしては、障害者などを含め、弱者を抱え込める社会こそが社会だと考える。弱者を切り捨て排除するだけの社会だとしたら、それは動物の社会であって、人間の社会ではない。

リアルなところで言うと、ニートが増えたので税金が月に1万円加算されますと言われても、それを許容する覚悟があるということである。だって自分がニートにならないという保証はない。それは障害者などと一緒で、明日は我が身であって、そういう人々の立場を想像し慮るのが人間というものだろう。

そこまで言うとさすがに綺麗ごと過ぎて偽善のにおいがぷんぷんな気もするが、しかしどうして、それほど偽りの無い本心である。

脱線した。とりあえず、貨幣経済で富を蓄えることのできるようになった現代でなければ、そしてその仕組みの中で相当に発展を遂げた日本でなければ、ニートという存在はそもそも不可能だろう。

まあ、そんなこんなをいろいろ考えてみると、ニートが増えているというニュースは聞き流すことはできないなと思う。が、しかし、いかんせんぼくは社会には、というか他人全般に無関心なので、誰か社会的な精神をお持ちの元気な人たちにがんばっていただきたい。がんばろうニッポン。

もう一度言う。がんばろうニッポン(棒読み)。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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