祭りに興奮しない日本人

最終更新: 2017/08/22

つまり、どこにも行きたくない-F1000243.jpg

それは僕。
先週末、なぜだか近所で祭りをやっていた。道路を封鎖して、マイナーな感じのダンスグループというかアイドルグループというかまあそんなやつらが歌って踊ってをしていた。彼ら(彼女ら)の後ろには踏切があり、踏切のカンカンカンカンとまったく繋がらなくてやけにシュールな光景だった。
また別の日。ひとりで下北沢から登戸へとハシゴしながら居酒屋を飲み歩いていた。
なぜだかヤケクソな気分で、暴飲暴食上等という気分でラーメンを食ってやろうそうしようと二軒目の居酒屋を出た。
そのあたりには何件もラーメン屋があり、どこで食おうかと思っていると、大学生のケンカしているところに遭遇した。
車道を挟んで向かいにある歩道で、20前後とおぼしき男二人が殴り合っていた。
いや、片方が一方的に殴っていた。馬乗りになって、相手の脇腹あたりを明らかなパワーでもって、連打していた。
周りには数人の仲間が居るようだったが、誰も止めようとはしなかった。僕も含め、寒々しい傍観の中、殴打が続いた。
その時、僕はほろ酔いで気分がよかった。少なくとも悪くはなかった。しかしそれを見ているうち、血の気が引くように冷静になっていった。
馬乗りの男はしばらく殴打を続け、気が済んだのか、立ち上がってあちらの方向にひとり歩き出した。
殴られうずくまる男を、仲間が肩を貸し立ち上がらせようとしていた。
あー! ムカツクッ!
先ほどまで鬼のような殴打を繰り出していた男には妙に不釣り合いな、エロエロファイアと聞こえる歌のあるカスケードみたいな甲高い声で男が叫んだ。
その背後では殴られっぱなしだった男がよろよろと立ち上がろうとしていた。
と、不意にカスケードが振り返った。そして走り出した。まだ完全には立ち上がれないでいる男に向かって。そして跳び蹴りをかました。
無防備な背中に、一瞬、足がめり込んだようにさえ見えた。冗談みたいにダイナミックに吹っ飛んだ。
吹っ飛ばしたカスケードはすぐに踵を返し歩き出した。
吹っ飛ばされた男はしばらく立ち上がらなかった。
吐き気がした。先ほどまでどこでラーメンを食おうかとけっこうな上機嫌であったのに、とてもなにかを食べる気にはなれなかった。
子供のケンカではなかった。自分に力があることを知っていて、その力の使い方を知っている大人のケンカだった。渾身の力で振り上げ振り下ろされる拳は、ただただ暴力で、戦場に転がる死体写真を見るよりもよほど恐ろしかった。
無知なのだろうか。あるいは単に馬鹿者なのだろうか。自分の拳が人を殺してさえしまうことが何故わからないのだろうか。
昔、兄弟ゲンカをしたら父がよく言っていた。
ケンカは戦争の始まりじゃけえ、と。

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新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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