回転寿司にまとわりつく子供
2017/08/22
久方ぶりに回転寿司に行った。前に行ったのがいつだったかは定かではないくらい久方ぶりだ。
家から徒歩10分弱の「むてん寿司」という全皿100円ビールに冷酒はセルフサービスというかなりイカしたお店だ。それがどれだけイカしているかということは入店した刹那、子供たちの狂気のおたけびを聞けば言わずもがな、である。
子供たちはみんな目を白黒させ、ぐるぐる回り続ける寿司やデザート茶碗蒸しなどなどを、じっと獲物との間合いをはかるカマキリの如く凝視していた。先ほど放り込んだタコだかイカだかで口をもぐもぐさせながら、その眼力といったら、ない。
僕は思った。彼ら(子供)にとって回転寿司とは遊園地なのだ、いやもっと、ライブ会場なのだ、と。
店員さんの「いらっしゃいませ」は、矢沢永吉あたりがシャウトする「ようこそヨコハマアリィーナッ!」なのだ。だからこそわわわぁぁーーーーと吠えるのだ。
着席は最初のスポットライトの明滅またはドラムの一打目ギターの弦が震えたその瞬間。だから一瞬静まり返り、そして爆発する。ぎょおぉぉぉぉぉ!
一皿目は定番のマグロで気持ちを盛り上げ二皿目はシメサバで渋く惹きつけ三皿目はだし巻きで甘く世の中の広さ深さを思い知る。
まだまだ序の口だぜ! 「盛り上がって行くぜヨコハマアリィーナッ!」
タコイカウニにイクラにエンガワツブ貝甘エビカリフォルニア巻き赤貝ヒラメ ……
「今夜はとことん行くぜ!イエッィ!」
その旨さ素晴らしさの猛攻撃たるや感涙よだれにぐじゃぐじゃ必至である。また感情は最高潮を迎え、ラスト、このナンバーをおまえらに捧げるぜっ!イェッ!
それは保護者のささやく「デザートは何を食べようか?」であり、それがたとえ他の皿と同じく100円だとしても、あたいもうダメ、1ヶ月分くらいの贅沢しちゃったからしばらく軒下で物乞いでもして均衡を保つ、と幼心にも思ってしまうほどに強烈なのだ。そう、そのあたりであのタオルが宙を舞う。
「サンキューベイベェー!ヨコハマアリィーナッ!」
て、久しぶりにブログ書いたと思ったらこんなんかよ、ってね。いやほんとは回転寿司の話は一行で済まそうと思ったんだけどついつい書きすぎてしまった。ちなみに僕は矢沢永吉のライブはおろか曲すら聞いたことがない。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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