戦争は始まり続け終わらない

  2017/08/22

つまり、どこにも行きたくない-F1000986.jpg

朝からなんだか怖ろしくなってしまった。
画像は全身に毒ガスを浴びた人の足。DAYSJAPANという雑誌から写メりました。著作権の侵害にあたるかもしんないんだけど、きっとこの記事内容はできる限り多くの人に知られてこそ意味があると思うのでまあよしとしてください、ってだめよね、ごめんなさい。
この人は工場現場で働いていた。ある日錆びたドラム缶が見つかった。それは旧日本軍の毒ガス、それも“毒ガスの王”と呼ばれるイペリットだった。
工事の衝撃でドラム缶が破裂し、全身に毒ガスを浴びた。
体中が桃のように膨れ、耐え難い痛みに襲われて病院に駆け込んだ。病院には同僚や周辺住民など43人が同じ症状で担ぎ込まれており、中には7歳や10歳の子供もいた。
膨れた傷口からは黄色い体液が溢れ出し、ある者は泣き叫び、ある者は意識不明に陥り、病棟は地獄絵図のようになった。
なんか、読んでるだけで具合悪くなりそうなほど生々しくその映像が思い浮かんでしまう。しかもこの事故は遠い過去の話ではなくほんのつい最近、2003年に中国で起こったのである。
さらに、近年経済発展にともなって、中国ではビルの建設が盛んになり、毒ガスによる事故が頻発して大きな問題になっているという。というのも日本は、国際条約に違反して秘密裏に製造していた毒ガスの発覚を恐れて、深い穴や井戸などに毒ガスを投棄しており、今も中国に40万発の毒ガスが残っているからなのである。
ほとんどの日本人にとって戦争は終わったって感覚が強いと思うんだけど、だって毎年“終戦○○年”“特集:戦後”なんてのばっかりやってりゃ戦争なんて終わったもの、過去のことだとしか思えないだろう。
たとえばメディアがこんな記事をもっとしっかり終戦とかの記事と五分五分ぐらいで取り上げてくれたなら、たとえ阿呆でも「もしかしたら戦争というのは終わることが無いものなのではないか」なんて疑問を抱けたりもできるだろうに、残念ながらこんな事実を知る機会は限られている。
Yahoo!のコメント欄とかを見てると食品偽装とかその他もろもろのせいか中国嫌いの日本人が顕著に多いみたいだけど、中国は中国の方で“日本を嫌う”理由はしっかりとあるのかもしれない。僕らが豊かな純真さで単に知らないだけで。
こういう事実というか史実を“知らなかった”では済ませられない時に来ているのかもしれない。「この道が一方通行だとは知らなかった」と言っても違反切符を切られるように、知る知らないに関わらず否応なく僕らは過去の行為に対する責務を生まれながらに背負っているのかもしれない。
殴り合いにしろ罵り合いにしろいじめにしろなんにしろ、とにかくは争いごとってのは、始まっても終わることがないんじゃないかと思う。いくら時が流れてもどこかしらにその傷跡が残っていて、思い出し、憎しみを再燃させる。
急に自分の身の上話になるけど、中学生の頃、ぼくはゲーム屋で上級生にからまれて、わけもなく針金でひっかかれたことがある。そのときはちょっと血が出ただけで大したことはなかったんだけど、その後運悪く傷跡が残ってしまった。
もう傷跡はかなり薄くなってはいるけど、僕は長いことその傷を見るたびにその場面を思い出し、上級生の顔を思い出し、そして今そいつに会ったらぶん殴ってやろう、なんて本気で思っていた。
そんな気持ち、いわゆる“憎しみ”が薄れてきたのは本当に最近で、少なくとも大学の半ばくらいまではそのことを思い出すと無性にイライラして、ひとり手足をジタバタさせていたのを覚えている。
だから、あらゆる争いは終わらないし、始まれば連鎖していきとめどないと思うのだ。
だから、一番大事なのは“戦争を始めないこと”だと、究極に単純なことだけど、心からそう思うのだ。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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