何もかもは変わる
2017/08/22
ホームページにも載せたんだけど、画像の絵は姉の子供、つまり甥を描いたもの。
色々事情があって半ば義務的に甥を描くことになってしまったのだが、かわいく描いてね、なんて姉の注文を七割がた無視してしっかり自分の画風で描き上げてしまった僕である。で、けっこう自分自身気に入った作品になったのでホームページにも載せたのである。
でも、思っていた。こんな“独創的”な描き方は、きっと姉の気に入らないだろうと。
「普通に描いてほしいんだけど」
「工夫はいらないから」
と、冷たくあしらわれて、きっと絵は実家の物置にでも放置されて……、などと思っていた、というかそれでも構うもんかいボケェ、わしゃあ芸術家じゃけえね、職業画家じゃないけぇね、普通に描くとかいうのはせんのんよ、ええ、芸術家じゃけぇね、わしゃあ、オリジナルよ、一番大事なんはオリヂナルいうことよ、あんたぁ、このブログ読む人じゃったらわかるじゃろうが。
と。とにかくはそのような、結構なツッパリ精神で実家に画像の絵を送ったのである。
で、返事が来た。
なんか、公募展に出して合否通知を待つような二、三日だった。
なんと、結果は合格だったのである。ありがとうありがとう大事に飾るよ、なんて。
でも、でも、しかし、僕はうたぐり深いので、というか、過去の姉を考えるにそんな返事はちょっと大人になった姉の社交辞令なんじゃないかと思ってしまったのだった。だって昔、福岡の大学にいたころ、姉に僕が描いた絵をあげたら(六号の作品を横にして二枚つなげたもので、作風は人間のシルエットをメインとしたような感じ、で、僕としてはかなりオシャレな作品だから姉は喜ぶだろうと思った)、そしてそのあと実家に帰ってみたならば、姉はノーコメントで絵は妹の部屋に飾ってあったのだった。
だからして、きっと気に入らないだろうがわしゃあ満足したけえそんなこたあ大したことじゃないわけよ、という感じだった。
が、また今日、メールがきた。
「描いてくれた絵の額縁を探してるんだけど サイズがよくわからなくて…
何サイズなの!?
そもそも日本製!?」
あ、え、うそ……。ちょっとびっくりしてしまった。
僕は少しとまどいながら、まただいぶにやけながら返事した。
「いやーわざわざどうもありがとう
「ジャケット」という規格サイズです。そんなに特殊なサイズじゃないので店員に行ったらわかるかと。
一応サイズは30×30cmです。」
ほんとに、ほんとに気に入る、というか、あの姉が我が子を描いたものとはいえ、「僕が描いた絵」を飾ろうと思う日がくるとは思いもしなかった。
なんだろう。この数年の間に、また子供を産んでから姉の中にどんな変化があったかはわからないけれど、とにかくは人って変わるもんなんだなあと、しみじみ思った。
それは僕もで、ほんのちょっと前ならば人の気持ちなど考えもせず、ただただ自分の自己顕示欲みたいなものから、「最近の現代美術では額自体あんま付けんし、要らんと思うよ」とか言ってたと思う。けれど、今は、額をつけようと思って行動してくれたこと自体が、ありがたくて、うれしかった。
きっと、“芸術作品”というスタンスとしては失格だろうけれど、そんなことはどうでもいいよ、本当に。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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