テポドンが飛んでくるけど僕らは

  2017/08/22

つまり、どこにも行きたくない-F1001055.jpg

早ければ11時にも発射されるというテポドン。
国際情勢とか北朝鮮のなんたるかとか歴史とか、政治関係にあまり明るくない僕にはいまいち「テポドンが飛んでくる」ということの真意がわからないんだけど、恐ろしいなあとは漠然と思う。
しかしながら恐ろしいと思いながらもどこかで「きっと平気、大丈夫」なんて楽観視していたりする。
この危機感の無さ、それがこそが危険なのだ、なんてのは月並みな言葉過ぎて既に意味を失ってしまっている。
いくら個人主義が進んだと言っても、やはり人っていうのはなんだかんだ超社会的な動物で、本能よりも先に「周りの人たちに従う」ようにできているんだろう。従うというよりも“呑まれる”に近いかもしれない。
去年末、暮れ、実家で派遣村のニュースに父親は憤慨していた。こいつらはバカじゃないのか、貯金は一円もないのか、なんて言って。で、それから「おまえは大丈夫か」なんて言われ「さあね」と答え、そして父は「金が無いなら1日8時間労働なんかじゃなく、10時間でも20時間でも働きゃええんよ、ほんまじゃけえ」というような趣旨の発言をしたものだから、僕のような人間はそんな発言にムッとするように出来ているので一悶着あったってわけ。
それからひとりになって考えた。父の発言と僕の感覚との間に横たわるおよそ埋まらない隔たりについて。
で、ほどなく答えを見つけた。父は1980年代とかそのあたりの高度成長期の時代、産めよ増やせよ消費せよの感覚で僕らを捉えており、僕は僕で昨今の“仕事よりも自分の時間が大事”という成長も頭打ちになって欲しいものも特に見当たらないような冷めた時代の感覚そのままに生きている。
父の青春真っ只中の時代、それは皆がなんの迷いもなくとにかくは働きまくっていたんだろう。そんな中で「本当の自分らしさとはなんだろう」なんて言う奴はまずいない。「三種の神器欲しいね!」「来月のボーナスで車買っちゃう!」「おれだって、マイホーム建てちゃうよ!」よし、明日も頑張ろう!
と、目標はただただ「豊かになること」だった。
僕らは「豊かであることが当たり前」な時代から出発しているから、豊かの先にあるもの、新しい価値を求めて生きていかなければならない。
しかし「豊かになること」以上にみんなが一致団結して頑張れるような目標は見いだせてなくて、おそらくは今後もそれ以上に国民全体ひとりひとりが魅力的に感じられる目標というのは出現しなくて、いつまでかわからないがこの「とりあえず楽しく生きればいいっしょ」みたいなゆるい空気はだらだらとしばらくは続いていくのだろう。
周りの影響力。仮に皆がテポドンを恐れて大鍋をかぶって家に閉じこもるなら、誰もテポドンが飛んでくると言われてる今日、デートしたりなんかしないだろう。
たぶん今日も渋谷のハチ公前あたりはいつもと変わらず人の海だ。恋人が来るのをワクワクしながら、自分のファッションを気にしながら、テポドンの飛ぶコースよりデートコースのチェックに余念がない。
平和ボケとか、何が悪いってわけでもない。今のこの時代の空気では、そのようにしか動けないだけだ。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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