タイムカプセルともいえるもの

最終更新: 2017/08/22

つまり、どこにも行きたくない-F1000151.jpg

元気がない元気がないと言っていたら突然に贈り物が届いた。
最初、不在票が入っていて、差出人を見ると「クリエイションギャラリーG8」とあった。
最近なにか買い物した覚えも何か送り付けられる覚えもなく、つーかそもそもクリエイションギャラリーてなんじゃらほい?? と早速ググってみるとリクルートが運営しているなにやら立派なギャラリーらしいことが判明。
日々たなぼた的出来事を期待して生きている僕の胸はにわかに高鳴った。
「お、お、オファー!?」
いやいやそんなわけはない。もし仮にそうだとしたらまず電話かメールで連絡してくるはずだ。最初から佐川急便なんて使うはずがない、いやいやいやいやしかししかし、立派なギャラリーだからこそオファーなんてするときは固く形式ばって文書で佐川急便などをしっかり使うものなのかもしれない、いやそうに違いない!
などとグルグルもくもく妄想を膨らませる僕のもとに、不在票が入っていた次の日の深夜、佐川急便きたれり。
で、届いたのが今日の画像の二本の傘。
それを見て、ああ、と納得がいって思い出した。
半年前くらいに、そのギャラリーで色んなアーティストがデザインした傘を展示・販売するという展覧会があって、それを見に行こうと言っていた人が居た。けど、結局ぼくは行かなかった。
記憶をたぐり寄せてはみるものの、何で行かなかったのかすらもはやよくは覚えていない。半年も前のことだからだ。
半年、と口で言うのはたやすい。けれど、半年、というのは実はとても長い。少なくともその間に季節は変わる。暖房は冷房に切り替わり、縮こまるコートははだけたTシャツに取って代わられる。お風呂上がりには汗がなかなか引かないし、夏はやっぱりビールだねと決まり文句が口をつく。
半年の間に何があったって、まあ色々びっくりするようなことがあった。それはほんとうに「いろいろ」で、他にしっくりくる言葉は無く、どこまでも「いろいろ」な半年間だった。
そうだ、説明が足りなかった。その人は傘を半年前の展覧会で買ったらしいんだけど、商品が届くのは半年後と言われたそうだ。ずいぶん先だなと思ったらしいけど、まあ誰だってそう思うけど、その“ずいぶん先”が来たから、傘が届いたのだ。
当たり前だけど、ずいぶん先、が現在になったのだ。しかしまた現在から見て“ずいぶん先”があって、先へ、先へと進んでいく。いつか途方もなく遠いどこかへ辿り着く。しかしその“途方もなく遠いどこか”にたどり着いたとき、その時はその場所が世界のすべてであるから、遠くでもずいぶん先でもなんでもなく、今と変わらず、同じように、ただ現在があって、その瞬間瞬間を生き続けるだけだ。そして現在、瞬間瞬間の果てに終着点がやってくる。やはりそれも現在でしかない。
現在しか生きられない。瞬間瞬間でしか生きられない、から、だからこそ人間は傲慢で欲深いのかもしれない。たとえ100才まで生きたって、長生きしたとはいえ、その時でさえも人間はただ一瞬の瞬間だけしか持ち得てはいないのだから。つまり、生まれた時からずーっと同じようにしか生きてはいないのだ、と思った。
あ、話が逸れた。傘をありがとう。大事にする、し、勝負服ならぬ勝負傘にする、よ。

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新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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