まわるお寿司の彼方

  2016/04/08

昨夜は神田駅前でまわるお寿司を食べた。

”まわるお寿司”なんて柄にもなくぶりっ子してみたが、どうして、回転寿司とはおもむきが異なってくる。

”まわるお寿司”には、人間が機械に踊らされているような、操られているような感じがある。いっぽうの”回転寿司”には、順当に人間が機械を操作して寿司を作って回している感じがする。

昨夜の気分的には、まわるお寿司であった。

まず、生ビールを注文した。すぐにきた。飲んだ。うまかった。

次にレーンから一番好きなエンガワを取って食べた。うまい。すかさずビールをねじ込む。うまい。

注文用のタッチパネルで納豆巻を頼んだ。ほどなくレーンの中央を突き抜けている、ちょうど縦貫道のようなレーンから、びゅうっと納豆巻きが運ばれてきた。受け取ってから、赤いランプが点灯している受け取りましたよのボタンを押すと、またきた時と同じようにびゅうっと帰っていった。

納豆巻きにもわさびをつけて食べる。何を隠そう、私はわさびが大好きなのである。ついでに辛子も大好きである。とにかくはビールを飲む。やっぱりうまい。

でも、別に楽しくはない。ひとりで食べているからというわけではない。さびしさはない。ただ、楽しくはないだけだ。そして、正直に言うと、うまい! と力むほどうまくはない。まあまあである。

何が足りないのか。何も足りなくはない。無理して楽しくする必要もない。楽しくないときもある。楽しくないなら楽しくすればいいじゃないかとは思うけれど、それは”365日四六時中常に”というわけでは決してない。というか、そういうわけにはいかないのが人生だ。楽しくないときも人生だし、それはいつかの楽しい夜のために越えて行かなければならない夜なのだと思う。いや、そう信じてる。

アジを取る。食べる。まあまあである。ビールがなくなったので、冷酒を頼む。私が馬鹿なのか酒が駄目なのか、あんまり味がしない。おつまみとして回っていたタコの吸盤の酢の物を取る。これにもやっぱりわさびをつけて食べる。コリコリしてうまい。いや、やっぱりまあまあである。

だんだん気分がよくなってくる。おつまみメニューを追加する。マグロの串かつ150円。

冷酒も無くなり、そろそろ帰ろうかなと思うが、もう一杯注文してしまう。別の銘柄を選んだはずなのだが、さっきと同様、味があんまりしない。私が馬鹿なのか、酒が駄目なのか。あるいはどっちもか。

マグロの串かつが届く。お寿司をはじめ、冷たい食べ物ばかりを食べていたので、ほかほかの串かつがやたらとうまい。これは確かにうまい。でも、マグロの串かつのくせに、中身の五割は玉ねぎである。でもまあ気にしない。クレームなんてつけない。酒が進む。気分もかなりいい。でも帰って早く寝なくては、そう思うが、ちょっと、いやかなり、気分がよくなってきた。

こうなると、私の思考回路は悪い意味で最高の柔軟性を示す。金は無いけど、散財するかなと思う。二軒目でも行くか、ということになる。ついでに、いつ死ぬかわかんねーし。どうでもいいよ、いろいろ、と思う。どうせ死ぬし、とも思う。

ぐるぐるっと思考を巡らせて、この日はなんとか理性で持って帰路についた。ちょうどいい感じのほろ酔いだった。これが居酒屋なら、必定、もっと長居してしまったことだろう。しかし、回転寿司屋は長居するという空気ではない。そう、回転こそが回転寿司の本質であり、それは客の回転も含めての回転なのであって、そうしてぼくは回転率のなにがしかの数字となって”まわされた”というわけである。

もう一度言う。”まわされた”のである。まわるお寿司屋さんで、まわされた、と。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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