ひとりの夜にできること

  2017/08/22

つまり、どこにも行きたくない-F1000950.jpg

ずいぶんと久しぶりに一人の夜を過ごした気がする。
飲みに行ったりすれば家に帰ってすぐにぶっ倒れて眠ってしまうわけで、ひとりの夜を謳歌するには静かで穏やかな予定のない空白の時間が必要なのだ。
で、昨日はこれまたずいぶんと久しぶりに画像にあるような落書きをクロッキー帳にガリガリグリグリしていた。大学生のころは暇さえあればこんな落書きをしていたのに、今ではめっきり触らなくなってしまった。画家の基本はデッサンだったりするのかもしれないけれど、僕の基本は今ではデジカメでありフォトショップでありプロジェクターである。
最近、美大に行っていたという知り合いと久々に話す機会があった。その人は漫画を描いていて連載とかを持っていたらしいんだけど(今はどうか知らないが)、最近は無職で職探し中らしく、暇だから久しぶりに油絵を描いてみたらしい。そしたら全然描けなくなっていたことにびっくりしたらしい。
新宅くんは何で描いてんの? と聞かれて、アクリルですと答えると、油とアクリルの違いってなに?って聞かれて、“乾きが早い”“メディウムが充実しているから水彩のようにも油彩のようにも描け、表現の幅が広い”しかし“油絵よりも耐光性や褪色に強いと言われているけれど油絵に比べて全然歴史が短いから、現実の時間の中でそれらの特性が実証されていない”なんてことをべらべら説明すると、僕の特性としてちょっと気分がよくなってしまった。
それから、下書きとかはどうしてんの?って聞かれて、僕はフォトショップで完成図を作ってプロジェクターで投影してシャーペンでなぞってます、というと、うわあハイテクだねえ、でもそのやり方って納得いかなくない?と言われた。
その人曰わく、絵は自分の画力でしっかり形を取るべきで、機械に頼るとどうも納得がいかない気がする、と。
あ~、でも僕も以前はそうでしたよ。機械に頼ったら自分の中の何かが死んでしまうような、ちゃんと“自分の作品”にならないような感じがありましたよ、と言うと、それそれ、そうでしょ~、と限りなく美術っぽい話で盛り上がってしまった。
だけど僕としては今はそんなことはどうでもよくて、完成図に至るための手段はまったく関係なくとにかくは出来上がればいいんだと思う、と言うと、「それはね、きっと自信だよ、おれにはできないもの。何枚も描いてきた自信があるからそういうのが平気なんだよ」なんて言われて、ぼくは変な気持ちになってしまった。
自信?
機械に頼っても平気だという感覚は自信からくるんだろうか?
いやいやそんなわけはなく、僕は怠惰なだけですと答えたんだけど、おそらくそれは本当だ。
対象をつぶさに見つめてしっかり捉え修練の中で培われた腕を機械のごとく制御し正確に動かし対象を画面上に表す。なんか、そういう修業的な行為が単純に面倒くさい。
最小の労力で最大の効果を得たい、ただそれだけのような。
だから、怠惰。たぶん、そう。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

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