とりあえずが出来なかった
2017/08/22
狭すぎる生活範囲、ベランダから道路を眺めていると、いかにも覇気のない中学1、2年とおぼしき男子がひとり、ゆらりゆらりと歩いていた。
十中八九登校しているものと思われたが、いつかの自分と重ね合わせると決してそうだとは言い切れなかった。
いつか、学生服を着ていってきますと普通に家を出てひとり公園に通っていた自分。軽い登校拒否だったんだろう、たぶん。
というのもその頃のことをあまりよく覚えていないからだ。むしろそんなことはすっかり忘れていた、が、いつか帰省中に聞いた妹の話でうっすら思い出すこととなった。
ある日、妹の学校では遠足か何かで校外を一学年くらいまるまる群れになってぞろぞろ歩いていた。その途中、とある公園を横切ることがあって偶然目撃してしまったらしい。アレ、あれは今朝学ランを着てしっかり登校したはずの兄ではないか。
僕はブランコに腰掛けていたらしい。周りに友達などは居らず一人だったらしい。
何をしていたのかは僕自身わからない、し、覚えていない、が、一人だったという事実だけは妙に自信がある。
その時の自分が何を考えていたのか、今となっては検討もつかない。今の自分とは別人と呼べるような思考回路で、僕なりの悩み、欲求、結論として学校を放棄し一人公園に座っていたのだろう。
そういえば、その時の僕は欠席の連絡とかどうしたんだろう。昼飯はどうしたんだろう。声をかけてくるおっさんやおばちゃんは居なかったのか、どうか。
やっぱりあやふやで、よく覚えていない。
これまたナルシスト的発想なのだが、その時の自分に会ってみたい気がする。きっと自分自身近寄りがたいくらいしみったれたしょうもない暗い顔で、時々ふと立ち上がったかと思うとブランコをこぎ、またひたすらじっと座っていたりするんだろう。しかしそれを、見てみたい気がする。
僕はきっと、ホッとすることだろうと思う。
それで、今からまた十年かそのくらいの後、僕はまた今の自分を見てみたい。
その時、もう一度ホッとできるのか、どうか。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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