かくかくしかじかで温泉に行った
2017/08/22
まともな旅行は二年ぶりくらいだろうか。だいたいが出不精なのでそもそも行く気がないのだ。つまり、どこにも行きたくない、のだ、いや、真面目な話。
そんな僕がかくかくしかじかで日本秘湯の会とかいうなにやら下世話な想像をしてしまわなくもないサイトでお宿を探して行ってきた。アット群馬県。
東京から鈍行で四時間くらい。車を運転するのが嫌いなのでオール公共交通機関。何度かおしっこが漏れそうになったけど大便が漏れそうなことに比べたらまるで屁でもなかった、いや小便だけど、屁でもない、という。
秘湯だけあって、その旅館に行くには山道を歩き唯一かかっている吊り橋を渡らねばならないのだった。
外部との唯一のつながりが吊り橋だなんて、コナンか金田一でありそうなシチュエーションで、僕はしつこく吊り橋が破壊された後のサスペンスの小芝居を繰り返していた。
犯人は、この中にいる!!
旅館も秘湯もよかった。でもやたらと虫(蚊や蛾)が多かった。宿のご主人も女将さんもよかった。でも受付に放し飼いの犬が居て僕には恐怖だった。いつでも走って逃げ出す心構えで台帳に氏名住所等々を記入した。視界の端でうごめく犬にハラハラヒヤヒヤしながら記入したおかげで、いつもは達筆な僕の字はミミズがはったみたくなってしまった。
でまあ箇条書きすると、ごはんもおいしかった。部屋もよかった。とにかくよかった。全部よかった、いやウソ、犬が居たこと以外は、と頑なに主張したい。
でもまあ総括するとむちゃくちゃ楽しかった。
つまりどこにも行きたくないというのは本心なんだけど、行ったら行ったで人一倍楽しめてしまうのは自分自身わかってる、けれど、そうそう行く気にはならないのだ、ぼくは、つまり、どこにも行きたくない、けれど、たまには行ってもいいよ、つまり、一旦でかけてしまえば、少なくとも帰るまでは、どこにも行きたくないとは言えないのだった、はしゃいでて、恥ずかしいから。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。
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