ある日、ある時、中目黒。

  2017/08/22

つまり、どこにも行きたくない-DVC00236.jpg

つい先日、色々あって中目黒駅に降り立った。訳あって散歩しなければならなかった。またもろもろの事情から何かしらをして数時間を、ひとりで潰さなければならなかった。
ちょっとくらい理由言えよ! て感じだけどこの世には言えないこともあるのである。男のくせにおしゃべりで、またどうしようもなく口の軽い僕でも、言えないことの一つや二つはあるのだ。いや、一つだけか。
そんなわけで歩いていると目切り坂というところにぶつかった。坂の上を見上げると、なんとなくノスタルジックな雰囲気で、まあ嫌いじゃない感じの風景が広がっていたのでぼってらぼてら登ってみた。
で、ふと脇にあった軽い雑木林というか秋らしい枯れ葉のおふとんに異様な雰囲気でころがっていたのが今日の画像。
マネキンの頭部である。
姉が美容師なので、マネキンの頭部にはけっこう馴染み深い(美容師はそれでロットなどの練習をするのである)のだが(高校のころ、芸術家気取りでそのマネキンの顔に油絵の具を塗りたくったりしていた)、あんまりにも異質で、これぞ異風景という感じだった。
また画像の通り、マネキンのそばにはちょうど頭部にぴったりな紙袋が落ちていた。
道路からマネキン頭部の入った紙袋をぶん投げたという風であった。
美容師を志したが夢半ばで挫折し、こんなもんもう要らんわ! と投げ捨てたあまり男前でない中肉中背で髪は明るめの茶色で長髪と呼べるか呼べないか的な男が僕の頭の中でありありと想像された。
そんな単純なわけあるかい! とお思いかもしれないが、世の中はけっこう単純なのだと思う。
犬のフンが落ちてりゃそこで犬がウンコしたに違いないのだし、遅延証明書が置かれてれば電車が遅れたのである。また、今2009年の年末だが、1月1日から今日まで日が昇り沈みしたからさあ年末となったのである。
すべては単純明快。
いいや!おれは私は顔で笑って心で泣いてとかいう複雑系だから!
とおっしゃる方もいるかもしれない。
だが僕はそんな人たちに言う。あっそ、せいぜい強く生きてくださいと。
だいたいな、複雑だと思うから複雑になるんだよ! 蛇口から水がポツンと垂れる、そんなことだってその時にできる波紋とか一滴の重さだとかをいちいち数式とかで計算したりしたらいくらでも難しくなるにきまっとる!
何に怒ってるのかよくわからんが、とにかくは僕は、ぽつん、蛇口がよく閉まってないね、うん、とかそういう単純さで生きていきたいのだ。とにかくもう、難しい話はこりごりなのだ。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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  • ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」

    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

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