おざなりでなおざりの

このたびの豪雨により、なんたら、犠牲になられた方々のご冥福を、かんたら。そして、被災されました方々に心よりお見舞いを申し上げ、被災地の一刻も早い復興を心よりお祈り申し上げます、とのこと。

正午きっかりに届いた、ありふれたメールマガジンの出だし。その直後には、『★今月のイチオシ商品★』などという売り文句が続く。

この手の文章は優秀で、台風だろうが地震だろうが、一切の推敲の必要なく、差し替えればなんにでも対応できる。

ああ、この心のない、冷えきった定型文よ――。そういうセンチメンタリズムを発揮するのは、思春期を遠く思い出すような中年には容易ではない。

それでも、とりあえず書いとかなきゃというおざなりな気持ちは透けて見える。そして一ヶ月か二ヶ月、この定型文をばらまき続けて、それからなおざりになったころ、消しとかなきゃと誰かが気づいて削除する。

他の人は知らない。ただ、私はなんだかなと思う。少なくとも誠実ではないと思う。心にもないことなら、言わない方がまだいい。

そもそも先の水害を、総理を含め東京のメディアは被害がいよいよ深刻になってから、ようやくで、慌ててべらべらと報じた。実際、日本とは東京のことであって、地方は日本ではないのだろう。それならでそれで、いっそすがすがしい。

見るに堪えないのは、おざなりな態度と、ことをなおざりにして時の流れにおもねる小賢しさ。地方にだってプライドというものがある。恋愛ではないが、興味がないなら無理して付き合ってくれなくてもいい。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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