羨ましいわけではなく

  2017/08/22

34歳ともなれば、別に地方でなくとも同年代の知り合いの多くは所帯を持っている。そのようなわけで、しばしばSNSで所帯感あふれる投稿を目にすることになる。

子供が何カ月になっただとか、配偶者がどうだとか、こうだとか。特に何の感慨を抱くわけでもないが、時に自分もそのようになっていたかもしれないという可能性のことを考えなくもない。

あるいは実家に帰ると、ローカルなマスコミとしての母親に、近所の同級生の話を聞かされたりする。小学生のころによく遊んでいた〇〇君が結婚したとか、どこで働いているんだとか、枝葉末節に至るまでが詳細に語られる。

そんな話にもまた特にこれと言った感慨はないが、やはり時に自分の“if”を考えてみないこともない。つまり、彼らと私とは何がどこで違ってしまったのだろうかということである。

話は逸れるが、かねてより私は一度でいいから同窓会というものに出席してみたいと思っている。小学校の、いや、中学校のそれに呼ばれてみたい(呼ばれたこと自体が一度もない)。と言っても、まず間違いなく話の噛み合わない非常な気まずさ、もっと言えば苦痛を味わうことになるだろうことは分かり切っているのだが、しかし、それでも出てみたいのだ。

なぜなら、かつて私は彼らと交わって悲喜こもごもを味わっていたからである。それは彼らと興味や関心、あるいは価値観を同じくしていたということに相違ない。しかし今ではかけ離れてしまったそのリアルを感じたいのである。

人と人とは、重要だと考える事柄を同じくする限り、繋がっていて切れないものである。趣味や目標は言わずもがな、単に金銭そのものに対する関心でさえ、共通項として機能して強力な紐帯となる。逆に言えば、それが失われたが最後、人はわけなく離散して忘れるのである。

えてして若い時分の友情や恋愛が濃密なのはそのためである。成績や服装、お小遣いや親のことといった重大な共通項に満ち満ちている時代は他にない。そうであればこそ、社会に出て大人になれば人間関係が希薄になるのは必然である。それぞれの興味・関心が空回るようにすれ違うからこそ、相対的に親となって子供を持てる人たちの繋がりが際立って見えるのである。

同年代の、親同士の会話は、いつかの若年の熱っぽい連帯を想起させる。夜泣きや発語、あるいは習い事や学校行事、様々語られる端々に、私は、どこか懐かしいような利害を超えた純粋な繋がりを見るのである。

羨ましいわけではない。ただ、そういう人生もあるんだよなと、遠く見ているだけである。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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