人望のないあなたへ

私には人望がない。とまれ、まずは人望とはなんであるかを明らかにしておきたい。

人望
1. 信頼できる人物として、人々から慕い仰がれること。(goo辞書)
2. 他人から寄せられる信頼・崇拝・期待の念。(Weblio辞書)

そう、それが私にはない。あったのがなくなったのではない。もともとない。言うなら、お袋の腹にでも忘れてきたのだと思う。ちなみに母は人望がある。だから、人望は遺伝しないと言わなければならない。

では、人望は努力によるのだろうか? 筋肉のように鍛え上げられるものだろうか?

たとえば、友人のH氏には人望がある。どう人望があるのかを言葉で表すのは容易ではないが、「そこには一軒、家が建っている」、というような動かしがたい事実として人望がある。

一方の私は、「そこはずっと、空き地です」というような冷たい現実として、人望がない。

そんな彼を、うらやましいと思ったことがないと言ったら嘘になる。しかし、人望とはいっそ持って生まれた目鼻のようなものであって、いまさらどうしたって変えようのないものなのだ。

そのことは、うすうすわかってはいた。だけど、もしかしたらある日、ふっと、いわゆるモテ期のように降ってわいてくるのかもしれない。そんな淡い期待があった。

なんであいつは、ちょっと残業しただけでコメントが10も20もつくのだろうか。どうしてあんちくしょうは、だらりビールを飲んでいるだけでいいねが100も200もつくのだろうか。

いさぎよく認めなければならない。人望とはそういうものなのだ。だってそうだろう。あの人がいくらぱっちり二重でも、あなたが一重であることとはなにも関係がない。

共通点と言えば、どちらも人間であるというくらいのものであって、他はもう、全然違う別ものなのだ。

だから、悲しむ必要はない。むろん、親のせいでもない。だってそれは遺伝しない。しいて言うなら、それは個性。あなたはとっても個性的で、そして驚くほど人望がない。だから、泣いてもいいけど悲しむ必要はない。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

ご支援のお願い

もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。

Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com

Amazonほしい物リストで支援する

PayPalで支援する(手数料の関係で300円~)

     

ブログ一覧

  • ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」

    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

  • 英語日記ブログ「Really Diary」

    2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。

  • 音声ブログ「まだ、死んでない。」

    2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。

  関連記事

永遠に縁のない

2008/09/02   エッセイ

信号待ち。自転車の荷台に子供用の座席を取り付けた主婦とその子供。 その自転車の後 ...

言葉から抜き取られた血と肉は

2013/07/02   エッセイ, 日常

つい最近、NHKが外国語を使いすぎることに精神的慰謝料を求めて訴訟を起こすという ...

満身創痍の五輪エンブレム(2020年東京オリンピックは誰のためか)

例の件について書こうと思う。もはや経緯を説明するのも面倒な、五輪エンブレム問題で ...

女の尻と一生

それは彼の出来の悪い娘に見えなくもないが、違う。 性的なものが漂っているし、カネ ...

フードプロセッサーを使った

2009/04/01   エッセイ

昨夜、僕はキッチンドリンカーをしつつ料理に励んだ(あ、励むという単語は子作りに使 ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2025 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.