母なるものへ

最終更新: 2017/08/22

べつに頼んで産んでもらったわけじゃなし、感謝する必要なんてないと思うわけ。あ、母ちゃんの話ね。

35にもなってまだそんなこと言ってんのかよ、ガキじゃあるまいし親孝行しろよって怒られそうだけど、実際、大人になってよくよく考えれば考えるほど、こんなしちめんどくさい世の中によくも勝手に産み落としやがって、毎日毎日生きるのが面倒くさくってしょうがねえじゃねえか、ふざけんなと文句の二つや三つもたれたくなるのは当たり前って。

そりゃね、子供のころはよかったよ。メシ食わしてもらって、毎日遊んでたんだから。ああ、人間って、生きるのって、悪くないかもって、そりゃあ思うよね。楽だし、なにより毎日最高に楽しいもの。

だけど大人になったら最悪だよ。来る日も来る日も仕事で、酒でも飲まなきゃ気は晴れねえし、金のことに悩んで、先のことに悩んで、はたまた人生とはなんぞやと懊悩し。

そんなもんね、考えたってしょうがないの。ほんとだよ。だって、おれがこの世に生まれたいって言って来たわけじゃないんだから。なんでって言われても、ねえ。友達に引っ張って連れて来られたなんかの集まりに、なんで来たの? って言われても、さあ? っていうのと同じでさ。

だから、今でも時々思うんだよね。あー、もう人間の人生のなんたるかは十分味わったから、そろそろ終了しよっかなって。死ぬかなー、って、首吊りとか、ぼうっと想像してみたりするわけ。

この先あと三十年? 四十年? 知らねえけど、そんなもん、今日までの日々の焼き増しみたいなもんで、新鮮味もなにもあったもんじゃねえって、漠然とわかるんだよ。生きてみなきゃわかんないって奴は、バカだとしか言いようがないね。おまえはいったい今の今まで何やってたんだって。メシ食ってクソしてヤるだけで満足なら猿に生まれても変わんねえよと。

歴史に学べば未来がわかるってのは本当だよ。未来はどんどん尻すぼみ、その尻すぼむのを、わざわざ見るために生きるなんて、ほんと、ばかばかしいんだって。

でまあ色々思うわけなんだけど、昨日、こんなのが届いたのよ。Dear. Tomoniって、中学の英語の教科書みたいな書き出しでさ。

こちらは穏やかな年明けととなりました。
シンガポールでは四季がないので
何の変化もない年明けとなった事でしょう。
しかし、誰もが経験出来ることを
しているわけではないのです。
誰もがやりたい事は山程あるけれど
実行できることはすごいことです。
金属バットで母親を殴るような息子でなくて
感謝、感謝。
これからの活躍を期待しております。
体に気を付けて精進して下され。

そんで最後はFrom. Hisakoって、いかにも昭和らしい母ちゃんからの手紙だよ。

こんなん読むとさ、まあ、もうちょっとがんばって生きててやってもいいかなって、ふしぎと思わなくもないんだよね。

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新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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