お金とマネー
いわゆる仮想通貨が600億円近く盗まれたらしい。
仮想通貨という言葉も600億という数字も、漠としてイメージがわかない。
どうやらそれは当事者も同じようだ。事件後にあった立ち入り検査によると、「いくら話を聞いても、どういう人間がどういうセキュリティーを動かしているのか全然わからな」かったという。
しかし、仮に現金で600億も積まれていたら、警備の二人や三人ではまず足りない。
これは人間の限界のひとつだろう。たとえば給与が現金手渡しから銀行振込になって以来、父の威厳がなくなったと言われる。我々は単なる数字の羅列にその重みまでは感じることができないのだ。
落語にある「水屋の富」がいい例だ。貧乏な水屋の男が、宝くじで大金を当てたはいいが、盗まれはしないかと四六時中不安で夜も眠れなくなる。現金の持つ重みがあってこそ成り立つ話であろう。
一方の仮想通貨は軽い。少なくとも金貨、札束にあるような肉感はない。
事件は未だ捜査中だが、盗まれたお金に印をつけ、換金できないようにする作業を進めているという。むろん、指をなめなめ現ナマに赤鉛筆で印をつけられるわけもない。すべてデジタル情報の上である。
水屋の話では、しまいにはそっくり金を盗まれて、しかし「これで今晩からゆっくり寝られるな」というオチがつく。この先、門外漢の素人は、話のまくらも何も、おちおち笑うこともできないらしい。

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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