距離をはかる
私は中年である。しがないおっさんの人生において何が辛いかって言ったら、自分の理想とする場所と、今いる自分の場所との距離を測ってしまうことだろうと思う。
さまざまな要素――現在の自分の実力、残された人生時間、可能性――あれこれ掛け合わせて、計測する。年の功というやつのせいだろう、その計測眼はいやでも年々精度を増して、自分の身の程をひとり勝手に思い知る。
ときどきは希望らしきものを感じられなくもないけれど、だいたい絶望。それが年中無休、24時間繰り返される。その間、遅々として私の人生は明るくひらけてはくれない。ただ刻々と年をとる。いよいよ精確になる計測眼が、私の等身大をごまかしなく提示して、私を苛む。
いっぱしの芸術家ぶって、大笑して馬鹿のふりでもできればいいのだが、当方、小賢しい処世術を身につけてしまったがゆえに、それも叶わない。
最近、眠る前によく声に出して言う。どうしよう、って。どうもこうもない。ただ、どうしよう、って、思う。
べつに、幸せじゃないわけじゃない。満足してないわけでもない。ただ、どうしようもなく膨らんでいく諦めのような何かしらがあって、それはたぶん、ほとんどのおっさんが感じてることなんだろう。
なぜって、どこにもいる、笑んでいるような泣いているような、なんとも煮え切らない顔をして酒を飲むおっさんの顔、まさに自分があんな感じになってきてるよなあと、最近ことに思うから。

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
- 前の記事
- 2025/04/17 更新 作家とギャラリーの取り分について
- 次の記事
- 2017/11/05 更新 十年前と、十年後。
出版社・編集者の皆様へ──商業出版のパートナーを探しています
*本ブログの連載記事「アメリカでホームレスとアートかハンバーガー」は、商業出版を前提に書き下ろしたものです。現在、出版してくださる出版社様を募集しております。ご興味をお持ちの方は、info@tomonishintaku.com までお気軽にご連絡ください。ブログ一覧
-
ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」
2007年より開始。実体験に基づくノンフィクション的なエッセイを執筆。不定期更新。
-
英語日記ブログ「Really Diary」
2019年より開始。英語の純粋な日記。呆れるほど普通なので、新宅に興味がない人は読む必要なし。
-
音声ブログ「まだ、死んでない。」
2020年より開始。日々の出来事や、思ったこと感じたことを台本・編集なしで吐露。毎日更新。
何かしら思った方は、ちょっとひとこと、コメントを! 作者はとても喜びます。
わかりやすく投げ銭で気持ちを表明してみようという方は、天に徳を積めます!