距離をはかる
私は中年である。しがないおっさんの人生において何が辛いかって言ったら、自分の理想とする場所と、今いる自分の場所との距離を測ってしまうことだろうと思う。
さまざまな要素――現在の自分の実力、残された人生時間、可能性――あれこれ掛け合わせて、計測する。年の功というやつのせいだろう、その計測眼はいやでも年々精度を増して、自分の身の程をひとり勝手に思い知る。
ときどきは希望らしきものを感じられなくもないけれど、だいたい絶望。それが年中無休、24時間繰り返される。その間、遅々として私の人生は明るくひらけてはくれない。ただ刻々と年をとる。いよいよ精確になる計測眼が、私の等身大をごまかしなく提示して、私を苛む。
いっぱしの芸術家ぶって、大笑して馬鹿のふりでもできればいいのだが、当方、小賢しい処世術を身につけてしまったがゆえに、それも叶わない。
最近、眠る前によく声に出して言う。どうしよう、って。どうもこうもない。ただ、どうしよう、って、思う。
べつに、幸せじゃないわけじゃない。満足してないわけでもない。ただ、どうしようもなく膨らんでいく諦めのような何かしらがあって、それはたぶん、ほとんどのおっさんが感じてることなんだろう。
なぜって、どこにもいる、笑んでいるような泣いているような、なんとも煮え切らない顔をして酒を飲むおっさんの顔、まさに自分があんな感じになってきてるよなあと、最近ことに思うから。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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