師匠は走らない

年末だの師走だのと騒がれはじめて一月あまり。

明日からはまた、新年だなんだと再び空騒ぐことになる。

この時期になると、みな憑かれたように一年を振り返りまくり、また死に急ぐように一年の抱負を述べまくる。

毎年のことではあるが、変だと思う。少なくとも私には違和感がある。

特におかしいのは初詣である。ふだん、北枕も気にしないようなのが、なぜか初詣には勇み足で、鈴を鳴らしまくり、願をかけまくる。

神様の世界にも、繁忙期と閑散期くらいあろう。暇な時ならいざ知らず、明らかに忙殺されている頃合い目がけて大挙されても困るのだ。

なじみの焼き鳥屋の大将が言っていた。うちはテレビとかの取材は断ってるんですよ。いやね、前に一度受けたら、その日からさばき切れないくらいの行列ができちゃって。逆に前からひいきにしてくれてる常連さんが入れなくなって本末転倒もいいとこ。もうこりごりだよ、と。

きっと神様は正月が嫌いだ。人間、もともと馬鹿なのがよけい馬鹿に見えるから。振り返るなら日々謙虚に振り返れ。そして願いがあるなら日々しっかり願っとけ。

全国津々浦々の神社は、いっそ一見さんお断りにしたらいい。そして締め出された参拝客は、自宅に神棚でも作って日夜柏手を打つ。

年に一度のにわかより、伊勢神宮に勝るとも劣らない霊験があろう。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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