笑いと悲しみ

悲しい時は言葉があふれる。逆に楽しい時には言葉が出ない。

だから今は、すらすら書ける。楽しい時に言葉が出ないのは、その典型的な反応である笑いが、言葉ではなく単なる音でしかないからだろう。

笑いは単純だ。一方の悲しみは複雑だ。それで物理的に、笑いは短くならざるを得ず、悲しみはしばしば長くなる。

お笑いのネタが長くても10分15分であることを考えてみればわかる。悲しみをそんな短時間で表現するのは難しい。

そう考えると、印象に反してお笑いとは言葉少なで、寡黙でさえある。悲しみは多弁だ。

なぜだか人は、特に知識人と言われる人なんかは、暗くて湿っぽいものを高尚と考える向きがある。

「いいね」の一言で済むものを「非常に興味深い」云々とでっちあげるのが彼らの流儀だから、余計に悲しみは長くて冗長なものになる。

しかし本当にこの世で素晴らしいもの、尊いものは、決まって短く儚い。たぶん誰でも知っている。むろん、短くて儚いので、とうの昔に過ぎ去り失われていることとは思うのだが。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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