みんな産まれりゃ好き勝手

「この頃、子供を産まない方が幸せじゃないかと勝手なことを考える人がいる」

2018年6月、自民党の二階俊博幹事長の講演会での発言である。

この手の発言は、最近立て続けにあった。

「必ず新郎新婦に3人以上の子どもを産み育てていただきたい」(2018年5月、自民党の加藤寛治衆院議員)

「子どもを4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討してはどうか」(2017年11月、自民党の山東昭子参院議員)

批判の嵐が巻き起こったのは言うまでもないが、そもそもなぜ彼らはそんな発言をしてしまうのだろうか。

答えは全然難しくない。彼らは子供を産む・産まないという選択をしたことがないからだ。結婚をする・しないという選択もしたことがない。

私の親にしたってそうだ。それは選択ではなく、小学校を出れば中学校に行かなければならない、そういう類のものだった。

「子供を産む・産まない」、「結婚する・しない」というのは、現代になって打ち立てられたまったくもって新しい問いなのだ。

かつて江戸の時代には、女性器にちり紙を詰めることで避妊を図っていたようなことを考えれば、それも当然だろう。

問いすらなかったところに、問いが立てられることほど難渋なことはない。たとえばクローンや脳死など、現代になって生じた問題は、いまだ正答らしい正答はない。聖書にも書かれていないこのような問題に当たるには、また千年二千年の時を必要とするのだろう。

そういう新しい問題だから、若者はみな懊悩している。しかし親世代はその問い自体が理解できない。すると冒頭のような発言になる。

彼らからすればなんら驚くべき発言ではなく、それこそ自然体の言葉なのだろうと思う。

私は中年であるので、どうして、どちらの気持ちもよくわかってしまう。とりあえず子供の立場からすれば、何にしろ揉め事の多い世界に産み落とされるのは気が進まないことだろう。

だからまあ、みんな勝手にすればいいし、結局そのようにしかできないのが、決して機械にはなれない人間という生き物なんだろうと思う。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

ご支援のお願い

もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。

Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com

Amazonほしい物リストで支援する

PayPalで支援する(手数料の関係で300円~)

     

ブログ一覧

  • ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」

    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

  • 英語日記ブログ「Really Diary」

    2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。

  • 音声ブログ「まだ、死んでない。」

    2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。

  • 読書記録

    2011年より開始。過去十年以上、幅広いジャンルの書籍を年間100冊以上読んでおり、読書家であることをアピールするために記録している。各記事は、自分のための備忘録程度の薄い内容。WEB関連の読書は合同会社シンタクのブログで記録中。

  関連記事

戦争も原爆もひとつのエンタメとなりにけり(オバマ大統領の広島訪問、スピーチについて)

先月末、アメリカのオバマ大統領が広島を訪れた。現役の米大統領としては初めての訪問 ...

松井のことも野球のこともよくは知らないが泣く

なんか松井が引退したらしい。 天声人語をはじめ、各紙のコラムは松井ネタばかりであ ...

折にふれて思い出すのは加藤茶のこと

まじめな話である。時どきふっと思い出すのだ。45歳も歳の差のある女性と再婚した加 ...

表現の本質(ダウン症の我が子と戦争体験から見る表現の問題)

冒頭から結論を述べれば、表現とは〈伝えること〉に他ならない。欲を言えば〈より良く ...

その人と作品は別もの(ゲスにファンキー、不倫報道で叩かれる歌々について)

今年に入って芸能人の不倫報道が相次いでいる。ここまでくると皆なにがしかのやましさ ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2024 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.