ドキュメント映画「いのちの食べ方」を見た

  2017/08/22

昨日はランニングがてらにツタヤに行ってビデオ、っていまだに言ってしまうが正しくはDVDを数本借りた。もちろん男はつらいよも借りている。

というかDVDという呼称にいまだに馴染めない。今の中高生はエロビデオのことをなんと呼んでいるのだろうかと思う。エロディーとか言っているのだろうか。ぼくの世代はもっぱらエロビであったので、いまだにエロビと言ってしまう。がしかし、確かに時代はエロDVDなんだろう。って日も高いうちからエロの話ばかりをしてしまったがエロDVDは借りてないのであしからず。だってぼくはもっぱらエロインターネットなのである、ってどうでもいい暴露をしてしまった。

さて、いのちの食べ方という映画というかドキュメンタリーを借りて、見た。学校の授業で一部だけ見せてもらって以来、全部見てみたいと思っていたのだ。

内容はわかりやすい。無音で(正確にはBGMが一切ない)、ひたすらにわたしたちが普段食べているものがどのように製造されているかが映し出される。

機械的に殺されるというか屠殺される(屠る(ほふる)ともいい、鳥や獣の体を切りさくという意味。ちなみにお正月に飲むお屠蘇(おとそ)の"屠"の字と同じなのだが、これは"蘇"に悪鬼という意味があり、つまりお屠蘇とは"悪鬼を屠る"ということで、穢れを払い浄化するというような意味なのであーる)、て、あ、豆知識に話がそれ過ぎたが、とにかくは豚、牛、鶏が、機械でバッサバッサと殺され、腹を裂かれ、臓物がゴミのように取り出され、さばかれ、洗浄され、なんの感慨も感情も一切入り込む余地もなく、ただただ淡々とスーパーで目にするような"肉片"に仕立てあげられてゆく。

ベルトコンベアーで無数のひよこが流され、ジャガイモと変わらないような手つきで作業員が仕分けてゆく。牛に干し草を与える場面では、アルプスの少女ハイジ的な牧歌的風景もやり取りも一切なく、大型の機械によって、水を撒くように干し草が牛たちにシャワーのようにかけられる。

広大な野菜畑には飛行機で農薬をまき、ビニールハウスで夏冬昼夜問わず育てまくる。木になったオリーブか何かの実の収穫には、大型の電気アンマのようなアームがついたブルドーザーで、木を直接握ってメチャクチャにバイブレーションさせて一気に振り落す。

という、まあ、そんな内容。

牛丼描いてるし、食べ物について何か思うところがあるかなあと思って見てみたが、特にそれほどの感慨もなかった。

ただ、ほんの一瞬、ちらりと「ベジタリアンになってみようかな」なんて考えがよぎったが、しかし、ぼくひとりがベジタリアンになったところで何の意味があるんだろうかと思った(いや、ダイエットには効果があるとは思うし、むしろぼくの目的はダイエットなのだが)。バーチャルウォーターのこととか、牛や豚に与える飼料、つまり穀物の段階で人が食べれば、その肉の何倍もの人が生きられるとか、いろいろ言うけれど、そしてそれらの情報を嘘だとは思ってないしきっとそうなのだろうとは思うのだが、しかし、だからいったい何なのだと思ってしまう。

それは、なんかやたらと騒がしいシーシェパードとか、毛皮なんて野蛮だとのたまう動物愛護団体とかを、きっとほとんどの人はうさん臭いと思ってしまうことに通じている。

彼らはつまり、独善的に過ぎるのだ。

人間に生まれた以上、完全に正しい生き方などあるわけがないのだ。

それでも完全に正しい生き方があると主張するならば、まずはこの地球における生物の正しい生き方を定義しなければならない。彼らの主張をざっくりまとめれば、つまるところ人間も野生の動物のように生きるということでしかないと思う。で、その野生の動物の生き方とは「生物としての能力を命の限り駆使して、外敵や気象条件といった障害と戦いながら死ぬまで生き抜くこと」でしかないのである。

そう考えると、ぼくとしては人間の為すことはすべて、生物として完全にまっとうだと思ってしまう。

だから生きるとは、聖も邪も、善も悪も、賢も愚も、すべて飲み込んで突き進むことでしかないと思う。そもそも正しいもクソもないのだ。

だから黙ってなんでも食え。肉でも魚でも卵でもなんでも食ったらいい。それがあるうちは気が済むまで食ったらいい。食えない日がきたら、食わないだけの話だろう。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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