お酒をやめようと思う

  2016/04/08

わたくし、お酒をやめようと思う。いや、ほんとうに。

なんというか、最近、常に体調がよろしくない。いや、悪いと言っていいレベルである。

常にだるいし、常に頭が鈍っている。すべてのことがどうでもよく感じる。生きることがしんどいと言っても過言ではない。

昨日は特にひどく、脳みそが溶解して耳から流れ出さんばかりの精神状態で、かつ、断続的に猛烈な吐き気が突き上げ、もともと少量の弁当でさえ半分食べるのがやっとであった。

ほんとうは、前々からすっぱり酒をやめたほうがいいのはわかっていた、にも関わらず、飲み続けていたのである。でも、楽しいから。それ以外に趣味がないから、酒を飲まないとうまくしゃべることができないから。そうして、夜が近づけば酒のことを思い、居酒屋のことを思案して、とにかくは飲むことばかりを考えてしまうのである。

しかし、お酒好きだねえでは済まないレベルになってきたことを感じる。たとえば最近、満員電車で30分、1時間と立ち続けるのが辛くなってきていることを加齢のせいだと解釈していたが、実のところは酒のせいだろうなとわかっている、いや、わかっていた。なぜなら、たった1日飲まなかった翌日は、平気で立ち続けて読書ができるし、何より目覚めが明らかに違う。身体がほんとうに軽い。

以前はきっと、それらが単純な若さと体力でもって両立していたのであろう。逆に、今ではもう、両立は年齢的、体力的に不可能なのであろう。

とは言うものの、飲みさえしなければ、まだまだ身体は健康なのであり、若くもあり、実にすがすがしい朝を迎えられることがわかっていながらも酒を飲んでしまうのは、もはや趣味嗜好の範疇を超えて、アルコール依存症の域に片足を突っ込んでいるのだろうなと感じる。が、そんなわけはないとごまかしごまかしやってきたが、いい加減に危機感を覚えた次第である。

アルコール依存症になるには「5・5・5」だと言われる。それは、1日5合以上、週5日以上、5年間の飲酒を続ければ、ほぼ間違いなくアルコール依存症になるという説である。これを知ったとき、ぼくは漠然と、まさかそこまでは飲まない、飲めないだろうと思っていたが、実際のところ、ぼくはそのくらい淡々と毎晩飲んでいるのである。となれば、アルコール依存症になるのは時間の問題である。

いよいよ、このままでは遠くない将来、身体が壊れてしまうだろうという感じがする。酒を飲むことで、思考力や、時間や、体力や、その他、酒によって得るものよりも失うもののほうが多くなってしまうだろうという感じがする。

だから、酒をやめることにする、した。タバコでもそうだったが、お酒を減らす、節酒なんていうのは土台無理な話なのだ。

まあ、初めての禁酒なので、いつまで続くか、どうなるかもわからない。予想としては、まずは付き合いが悪くなり、酩酊特有の陽気さ、多弁も消え失せ、もともと真面目な性格でもあるので、あるいはなんの面白みもないクソマジメな堅苦しいだけの人間になり果ててしまうかもしれないが、まあ、その辺は、身体を壊し”かけた”んだということでご了承いただきたい。

飲酒に費やしていたエネルギーを、どこか、なにか、別の形で酷使していきたいと思う。

タバコも酒もギャンブルもやらない立派な大人、かどうか知らないが、禁酒が成功すれば、わたしはそのような、表面上だけは清浄な人間になるであろう。とはいえ、 水清ければ魚住まずとも言う。いくら健康でも、はめを外すこともない、ひたすらに正常な人生というのもいかがなものか、とも思う。

まあ、そんな憂慮も、タバコがなければ人生の楽しみが減ると思っていたのと同様、思考回路の変換がすべての鍵であろう。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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