頭はもう、先に行ってしまった

最終更新: 2017/08/22

今朝は六時に家を出た。さっさと仕事をして早いところ新幹線に乗るためである。

おなかが空いた。駅弁とビールがぼくを待っている。

昨日の学校は調理実習であった。が、コーヒーの授業であった。コーヒーの産地から煎れ方から保存法から、コーヒーのいろはのお勉強をした。

単語だけは知っていたが、サイフォンというものをはじめてまじまじと見た。めんどくさいことこのうえない代物であることはよくわかったが、アルコールランプで熱したりするあたりがツボで、妙に欲しくなってしまった。

それはまあいいのだが、食べるものがなかった。ひたすらにコーヒーを飲んだ、後半は飲まされていたのである。喫茶店ではないので茶菓子などあるわけがないのだ。あるのは覚醒と利尿作用だけである。

そういうわけで、帰りに友達とちょっと一杯立ち飲み屋に寄った。

で、言われた。もうすぐさよならだねー。もう、これからとかじゃなくて、思い出の整理の段階に入ってるよね、と。

そうだよなー、と思う。もう、現時点で東京で何をしようとか、したいとか、まったくもってなにも無い。

その反面、すこしずつ、広島ではどういうことをしよう、どんなふうに生活しようかと、そういうことを具体的に考えはじめている。

いま住んでいる自分の部屋も、もうほとんど関心がないので、とても散らかっている。食器ももう買わないし、トイレットペーパーも今あるストックでこと足りてもう買わないかもしれない。そして要らないものはすこしずつ捨てはじめている。引っ越しの荷物はできるかぎり少ないほうがいい。

高校から大学に進学するとき、福岡へ引っ越すとき、ぼくは楽しみで仕方なかった。家族から解放されたかったし、一人になりたかった。実際引っ越してからも、ホームシックも何も一切なく、大満足であった。

それから五年。留年しつつも大学を卒業して、上京するとき。これもまた、わかりやすく夢いっぱい胸いっぱいという感じで、単純にわくわくして、楽しみだった。そしてまあ、それなりにいろいろあって、総括すれば楽しかったのだと思う。

それから八年。あれほど飛び出したかった実家に自らの意志で帰るという。残念ながらわくわくはしない。それほど楽しみでもない。しかしとにかくは帰る。いままでの経験とはまったく違う引っ越し。

でもひとつ言えるのは、大きな引っ越しのたびに、環境は劇的に変わった。そして自分自身も大きく変わった。

今度もまた、変わるだろう。どう変わるかは知らないが、変わることだけは、絶対に確かだろう。

それは怖くもあり、楽しみでもある。

一回りして、ずいぶんと大人になったのだと思う。

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新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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