当方、休肝日にて

  2017/08/22

酒を一滴も飲まなかったのはいったい、いつぶりだろう、というくらい酒を飲み続けた日々を送っていた。

しかし昨日、どうも体調がすぐれない、というか、胃のあたりから下腹部にかけてが完全に死にかけている感じがしたので、さすがにこれは飲んではだめだろうと、ぼくの身体が言っていた。

脳ではない。脳は毎日でも酒を飲みたいと言っている。しかし身体はもう勘弁してほしいと言っている。

思うに、人間が死ぬときというのは、あるいははっきりとわかるものなのかもしれない。

身体は正直だ。いや、AVの見すぎではなくて、脳は身体に追随するのであって、身体が脳に付随するのではないと思う。

元気があればなんでもできるというのは馬鹿馬鹿しいほどに正論なのだが、しかし、どうして、元気が無ければなんにもできない、という当然すぎる事実は忘れられがちである。

節制、節約、節度、つまりはなんでもほどほどにするのが一番いいのだが、ほどほどで止められることは、それこそほとんど無い。

夜は酒を飲むものだということになっている。だけど飲めない。仕方がないので本屋に行った。昨日の夜。

ちょっとパラパラめくって帰るつもりだったが、二時間近くうろうろしてしまう。本を新品で買いたくはないが、やはり本はいい。ありとあらゆる知識、誰かが脳みそを振り絞って命を削って書き上げた本が、何百円とか数千円で手に入る。なんというコストパフォーマンスであろうか! お得の最たるものだと思う。

そんなこんなで結局買った本は「ドロップボックス活用術」と「現代アートの巨匠」の二冊という、若干の精神分裂が感じられるセレクトであった。

帰路、一時間くらいの電車内、さらっとドロップボックス活用術は読み終わり、内容の薄さから買うほどではなかったなと後悔しつつ、読了本の記録として本の表紙の写メを撮ろうとしたが、iPhoneの充電が切れていたのであきらめて、現代アートの巨匠へと読み進めた。

最初の項目の、デュシャンの大ガラスの説明あたりで最寄り駅へと到着した。

まだそれほど冬!というほどではない寒さだと思いつつ、自宅へとたどり着く。お弁当を作り、お風呂にお湯をためて、深々とつかった。あぁ~、と、ひとりごちた。

藝術、アート、ぼくが制作するべき作品について考えようと思ったが、うまく考えがまとまらなかった。ただ、頭のてっぺんまでお湯につかって、つまり潜って、日々の生活に忙殺されるという感覚に思いをはせた。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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