映画「潜水服は蝶の夢を見る」を見た

  2017/08/22

なんでこれを見たかって、監督がジュリアン・シュナーベルだから。ジュリアン・シュナーベルは1951年生まれのアメリカの新表現主義の画家で、壊れた陶器の皿を画面にバッキバキに、ある意味相当に悪趣味に貼りつけまくった絵で有名な人物である。ちなみにぼくはこの人の絵は好きじゃない。平面に立体物を貼りつけるという手法が、そもそもスマートじゃないからだ。そういうことをするなら立体でやれよと思ってしまう。平面作品というものは画面から一切のものが飛び出すべからず、というのがぼくのスタンスである。

そういうわけで好きじゃあないんだけど、芸術家が撮った映画はどんなもんじゃいと、ちょっとうがった眼で見始めたのだが、これが相当に良くてショック。

なんかイメージとして、芸術家の撮る映画なんてストーリーはあってないようなもので、気ままに映像美に遊ぶというか、画面の面白さで突っ走るのだろうと思っていたが、むしろその真逆であった。

ストーリーもよくできているし、意図するところもわかりやすく表現されている。そしてほどよく、芸術家ならではだろう、視点のおもしろさ、優れた画面構成が控えめに散りばめられている、ような気がした。

一応内容をごくごく簡単に説明しておくと、有名ファッション雑誌の編集長として華々しい人生を送っていた男が、ある日突然脳梗塞的な病気で倒れてしまう。そして目覚めると左まぶた以外は動かすことができない植物人間になっていた。しかし、意識だけは完全に正常ではっきりしている。そんな状況で、周りの人や本人の懸命な努力で、左まぶただけでコミュニケーションを取る方法を確立していき、自伝を綴り本を書いて出版する、というような内容。

あらすじはまったく脚色なく以上。あらすじだけ見るとなんか三流のにおいがぷんぷんするが、百聞は一見しかず、一流の内容であると思うので興味を持った人は見るべし。そういうわけでぼくはどっぷり入り込んで、ちょっぴり泣いた。いい映画だった。

話は変わるが、最近太ったと冷静に言われて真剣に落ち込んだ。いや、現在進行形で落ち込んでいる。

確かに実家から帰ると、大学のころからだいたい65kgくらいなのに68.5kgに、おお3.5kgも太っていた、が、今は一応67kgまで戻っていた。が、しかし太ったと言われることがこんなにもショックなのかと、人に対して適当に太った?とか無神経にはっきり言ってしまう自分を反省……しない。太ったら痩せればいいだけの話だ。太るのは自己管理ができていないからだ。ブタ野郎にはそれなりの理由があるのだ。ノーモア脂肪。おれは意志の強い人間なのだ、自己管理に長けた人間なのだ、おれから意識の高さを取ったらそれこそただの木偶の坊だ、というわけで、落ち込んでもしょうがないのでランニングをした。というか、ランニングの頻度を増やす。

これからますます勢力を強める中高年の基礎代謝量減少という強敵に、おれは負けない。燃えろ脂肪。目指せ高田純次。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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