ほぼエッセイ、ときどき現代の美術とアート。

海外に行って何者かになりたいアーティスト

海外に行く――野心のあるアーティストならば一度は考えることである。

よく言われるのは「日本でアーティストは食えない」から。しかし、海外に行けば食えるのかと言えば、そんなわけがない。海外なら「ゴミ」(無名の芸術家の作品)がいくらでも売れるのか。世界はそんなに広くない。この地球上、どこまで行っても我々と同じ人間しか住んでいない。

そんなことは海外に行かなくたってわかる。にも関わらず、アーティストはいまだ海外に夢を詰め込む。

詰め込むのは勝手だが、そんな重いの、行ったらすぐに沈没する。自分探しと同じで、あなたの夢見る海外なんてどこにもない。

アーティストにとっての海外は、大学最後の夏休みにバックパッカーになってインドに行くみたいなもので、行けば何か見つかったような「気はする」だろうけど、その実、見つけたのは現実逃避に使えるマリファナくらいのものだったりする。

短絡的なのだ。「日本=だめ」あるいは「海外=よい」――そんなに単純な世界はない。そこまで馬鹿じゃないと思う向きもあろうが、「日本で活動する私=さえない」、「海外で活動する私=素敵」くらいは頭のどこかにあるはずだ。しかしどちらも同じ、残念な思考回路である。

確かにアーティストを目指す日々はものすごくつまらないし、退屈で、なにより苦しい。そこで海外に行ったとしても、苦しむ場所が変わるだけなのだ。加えて阿吽で通じるような理解者は望むべくもなく、言葉の壁も高くそびえて、宇宙空間に投げ出されるがごとく、ひとり途方にくれることになる。

では一体どうすればということになるが、とにもかくにも海外に行くしかない。行って、そのつまらない幻想を壊してくる。海外に行く価値と言えば、それくらいのものである。

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