ARTDISFOR(アートディスフォー)という青春

  2020/08/19

いまでは知る人ぞ知る集団というかユニットになってしまったが、かつてぼくと樋口は「ARTDISFOR」というアートユニットをやっていた。

それは漫才でいうところのピンかコンビかというのと一緒で、要するにコンビでやっていただけである。

現代アート界にはユニットでやってる人がちらほらといて、ぼく(ら)がリスペクトしていたのは、パラモデルだとか淀川テクニックだとかである。

でも実際、このユニットをやり始めたのは赤瀬川源平らがやっていたハイレッドセンターに触発されたからであって、だから「!」みたいなマークが欲しくって、けっこう二人でうんうんうなった結果「4」をぼくらのシンボルマークにすることにした。アートディスフォーの、フォーが4だというだけの話である。

そもそものユニット名の由来はサイトに載せているが、リンクするのが面倒な方のためにここに転載しておく。

『「ART DIS FOR」とは、樋口師寿と新宅睦仁により2007年に結成されたアートユニット。"4"がシンボルマーク。

ARTDISFORの「DIS」という単語自体には侮辱や無視するといった意味があるが、このDISは「ディスる」というネット用語からきている。ディスるとはdisrespectする、軽蔑やけなすといった「口撃する」の意で使われる単語である。そういった俗で下世話な言葉と、一般的に高尚なものであるという認識の根強いARTを組み合わせることで、ARTそのものに対する疑問符を投げかけているのである。なお、FORは「〜に対して」という意味で使用しており、とどのつまりARTDISFORとは「アートに対して攻撃する」というほどの意味である。

上記にある通り、ARTDISFORは「攻撃」を基本テーマとしており、主に絵画を用いた作品制作(平面インスタレーション)を行う。テーマである攻撃の方法や対象は様々で、絵画を燃やす・作者を捏造するなど、既成概念に捕らわれない挑戦的かつ実験的な作品を制作している。

また、2009年より、インスタレーションとしてではなく独立したペインティング作品も制作している。』

改めて読むと、なんだかすこし、面はゆい。

さて、なんで今さらこんな話をし始めたかというと、ひさしぶりに自分の作ったARTDISFORのサイトhttp://adf.ifdef.jp/を見て、さまざま思うところがあったからだ。

このサイトはURLを見ればわかる人はわかると思うが、忍者ホームページというサーバーもドメインも無料のサービスで作ったものである。だから、ページの端にうっとうしい広告が常時表示されている。さらに、3か月以上更新しないと、でかい広告(ほんとうにでかい。嫌がらせかといういうくらいに)がページの最上部と最後部に表示されるようになる。

もちろん3か月以上更新していないので、でかい(しつこいが、ほんとうにでかい)広告が表示されていた。内容はかなりおもしろいのに(自己およびその他数名のコアなファンの評価)、スパムかウィルスにも見える広告らによって、このサイトは、さびれた感、価値なし感、どうでもいい感、直帰感が尋常ではなかった。

それで、ちょっと、もったいない気がした。現代アート界の評価云々はさておき、とりあえず一見の価値はあると思うからだ。いま考えれば詰めが甘い、コンセプトが弱い、手法がつたない等々、つっこみどころは満載だが、しかし、それでも、一度は見る価値があると思うのだ。

あの頃のぼくらは、浅薄で性急な名誉欲や出世欲にぶんぶん振り回されてはいたが、それでずいぶんとブレもしたしモメもしたが、それでも、決して悪くない活動をしていたよなあと思う。

なにはともあれ、広告に埋もれさせておくべきではない。そう思って、新たにきちんとした"有料"のドメイン、https://tomonishintaku.com/works/artdisfor/ を取得して、ぼく個人が使っている"有料"のサーバーに移設した。

というわけで、ARTDISFORのURLが変わりましたのお知らせいたします。http://adf.ifdef.jp/ → https://tomonishintaku.com/works/artdisfor/ です。元のサイトから入ってもしばらくはリダイレクトできるようになっているので問題ありません。

閑話休題。

ARTDISFORの活動についてもだが、このホームページ自体にもいろいろと感慨深いものがある。

なんといっても、生まれて初めて自分で作ったホームページだからである。いまではいっぱしのWebデザイナーという肩書きで働いているが、これを作ったころはアルバイトのテレフォンオペレーター(インバウンド)で、時給1250円であった。

今あらためて作ったサイトの内容を見ると、ディレクトリ構成(倉庫でいうところの箱の置き方、しまい方)、タグの記述方法(倉庫に置いてある箱の中の整理整頓方法、仕切りを使ってきれいにしたり等)など、我ながらロクでもない稚拙な作りで呆れてしまう。完全に素人である。少なくとも、こんなwebサイトでは商売にならないし、お金をもらえるレベルではない。

とはいえ、これはこれで、無い能力を振り絞って必死で作ったことだけはちゃんと覚えている。同僚や友人に何かひとつでも新しい技術を学ぶと、すぐにこのサイトに取り入れた。そう考えると、意外なほど貪欲だった。いや、ユニットの活動と、ホームページを作り上げる喜びが、たまたま、うまくリンクしていたんだと思う。

そうして樋口にホームページを更新したと伝えては、毎回無邪気に喜び合った。いや、暗にぼくが褒めさせていただけだろう。樋口は、褒められたがりなぼくの性格を熟知しているので、よくなったとか、すげえだとか、毎回律儀に褒めてくれたのである。

そんな日々の積み重ねが、このサイトを一生懸命に作ったことが、ぼくの今につながっているんだろうと思う。一生フリーターでいいと思っていた人間に、いつの間にか手に職っぽいのができている。それはもう、あきれるほどの偶然でしかない。

最近よく思う。Webデザイナーになりたいと思って高い金払って学校に通う人だってたくさんいるのに、フリーターでいいやと思っていたようなやつが”なんとなく”かつ”いつの間にか”Webデザイナーになってそれなりの給料をもらっている。いや、そういう人たちからすると”もらっていやがる”。

世の中、不公平だ。とかなんとか言いつつ、実際は単なる自分の仕事運自慢である。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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