ほぼエッセイ、ときどき現代の美術とアート。

アメリカの動物

アメリカ人は動物が大好きだ。たとえば30代のアメリカ人の75%が犬を飼い、51%が猫を飼っている。
参照:Washington Post "Millennials are picking pets over people"

だからかもしれない、彼らが捕鯨に反対するのは。確かにクジラは動物であって、魚ではない。

そんなアメリカで生活していると、しばしば車に轢かれて死んでいる動物を目にする。カリフォルニアに限って言えば、鳥や猫、リス、それからスカンクも多い。これが轢かれた直後はとんでもなく臭い。まあ、命を賭した一世一代の屁だと思えば当たり前かもしれない。

さて、不幸にして轢死の憂き目に合ってしまった彼らだが、動物好きのアメリカ人のことだ、きっと手厚く葬ってくれることだろうと思ったら大間違いだ。何日経ってもそのままである。片付ける者はいない。それこそ文字通り「毛皮」になるまで轢かれ続けて、放っておかれる。

つい最近も例によってスカンクが派手に死んでいた。車に何度も轢かれることで少しずつ肉が削がれていき、そのうち毛の塊となって軽くなり、ふわり、自然と道路の端に寄っていき、最後は排水溝に消える。

またある時はスーパーの駐車場のど真ん中で渡り鳥か何かとおぼしき大きな鳥が轢かれていたが、これもまた放置され続けて、半月以上に渡ってその死体の変化を観察させられることになった。

つまり、幹線道路で交通量が多くて片付けられないとかいうのではない。人通りの少ない脇道でも、誰かの自宅のほとんど目の前でも、ずっと動物の死体が転がされているのである。

これは日本人には到底理解しがたい感覚であろう。大半の日本人は、そんなかわいそうなままにしておくのは忍びないし、そもそも不吉だと考えるのではないだろうか。だから日本では、その手の動物は半日と経たずに誰かが片づけてしまう。

この彼我の差は、日本にあるアニミズム的なものの考え方と、西洋のキリスト教的観念の違いからくるのかもしれない。考察するうえで参考になろう一節を思い出したので、以下に引用しておきたい。

あるとき大勢の会食で、血だらけの豚の頭がでたが、さすがにフォークをすすめかねて、私はいった。
「どうもこういうものは残酷だなあ」
一人のお嬢さんが答えた。
「あら、だって、牛や豚は人間に食べられるために神様がつくってくださったのだわ」
~中略~
「日本人はむかしから生物を憐れみました。小鳥くらいなら、頭からかじることはあるけれども」
こういうと、今度は一せいに怖れといかりの叫びがあがった。
「まあ、小鳥を! あんなにやさしい可愛らしいものを食べるなんて、なんという残酷な国民でしょう!」
私は弁解の言葉に窮した。これは、比較宗教思想史の材料になるかもしれない。

引用元:肉食の思想―ヨーロッパ精神の再発見(中公新書)鯖田 豊之

日本人は、動物にも魂があると考える。だから、死んでしまったペットとあの世で再会するなどという発想もごく当たり前にある。しかし、キリスト教において、動物はあくまでも神が人間に与え給うた食べ物、それこそ肉塊に過ぎない。

そもそも動物のためのあの世、いわゆる天国はキリスト教には存在しない。人間と動物とは地続きではなく、完全に断絶しているのだ。いまだに進化論に対する非難が巻き起こるのはそのせいで、我々は人間様だというわけだ。

動物は動物でしかない。しかし、そこに知性を認めると、彼らの態度は一変する。それが犬であり、クジラやイルカなのではなかろうか。そう考えるとつじつまが合う。

合ったはいいが、猫やリスを盛大に轢き殺した足で捕鯨反対のデモに加わってなんら矛盾を感じないような彼らと、我々がわかり合える気はしない。全然しない。

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