美化運動の必要ない
2017/08/22
下北沢で飲んでその帰り、なぜだかいつもより二時間ほどは早い帰宅で、僕は思い立って登戸駅で途中下車した。
らーめんはうすでラーメンを食べようと思ったのだった。
らーめんはうすに向かう道のりはそのまま以前住んでいた家への帰り道で、作りが悪いのかやたらとバコベコ音がする下水道のフタ(それが唯一の歩道になっている)の上を通り、ラーメンを目指した。
もともと感傷的なのか、酔うと感傷的なのか、とにかくはなんだか感傷的な気持ちで僕はひとり“バコベコ”歩いた。
さら地だったところに綺麗なマンションが立っていた。
そこがさら地になる前はあり得ないくらいボロい掘っ建て小屋みたいな古本屋で、ぼくはそこで何かの小説を買ったのを覚えている。
が、今はマンション。ピカピカの、マンション。
めずらしくラーメンだけを注文した。餃子とご飯も付けたかったが我慢した。ラーメンは安く、400円。ただしうまくはない。
客が少なかったおかげでたいしてうまくもないラーメンはすぐに出てきた。
酒を飲んだあとのラーメンは絶品と相場は決まっているのだが、悲しいかな、やはりたいしてうまくはなかった。
動物園とかの軽食コーナーで発泡スチロールのお椀で出されるウドンみたいな味と、クオリティ。
健康志向、というかたいしてうまくもないのでしっかりスープを残して店を出た。
ラーメンのおかげで額にはうっすらと汗を書いていた。
で、これは前にも書いたが(というか以前書いたブログとほぼ重複した内容になってしまったが)その店の隣ぐらいが僕の前の家、で、僕は見上げる。
以前の僕の部屋には電気がついていた。
その部屋に僕以外の人間が電気をつけているのを初めて見た。
もう僕はそこに居ない。
当たり前の事実が、やけに記憶を刺激する。
そこで僕はどうしようもないような生活しかしていないにも関わらず、やっぱり一応は頭の中で光る思い出。
人生にある最高の時というのは、いつも1年前とかに存在している気がする。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。
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