経験は感情の前に倒れゆく
2017/08/22
なんだか閉じ込めておく装置が欲しいな、なんて思った今。いや、これはブログ書くためにわざわざ思いついたわざとらしい発想である。
時間銀行のモモじゃないけど、たとえば喜怒哀楽を閉じ込めておいて、あとで味わう。冷凍食品感覚で、あ、あれ食べよ、と喜んだり怒ったり悲しんだり楽しくなったりしてみる。
うん、今はまー幸福感なんかを閉じ込めておいて、ヒマな時にぼそぼそ幸福を食べる。そこは近所のさびれた公園で、さらに季節は冬で刺すような物悲しさがただよっているのに、ちょっとだけあったかい気分になる。そうだな、ホットの缶コーヒーぐらいの安らぎ。でも人間は欲深いのですぐに消えるその幸福に、もっともっとと幸福を追加する。追加していると、ただ「幸福」というものを追加してるはずなのに、周りにだんだんと人が増えていく。まあベターに恋人とかから始まり、なぜだか子供ができ、地からは家が生えてきたりして、さらにはやかましく元気な孫ができ、そしてちゃんと決めてないから誰かよくわからないけど、そいつをまあ僕として、僕はいつの間にか縁側でお茶をすすっている。
で、しばらく安寧に暮らしたある日のぼくは気づく。これはぼくの考えた、オリジナルな幸福じゃない、と悟る。ついでに茶柱にせき立てられるようにぼくは立ち上がり、旅にでる。もちろんぼくの、ぼくだけの幸福を見つけるためだ。でも行き先は決まってる。近所の公園だ。な?缶コーヒーがなつかしいだろ。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。
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